君と笑って幸せ。









「やっと帰ってきましたね」
「そうだね。藍州では結局ばたばただったしね」

なんだかんだでようやく落ち着いて、久しぶりに訪れた紅家の屋敷で、以前となにも変わらない笑顔で迎えてくれた少女のお茶を飲みながら、穏やかな時間を過ごす。
ついこの間まで二度とやってこないと思っていた、時間。

「でも、こうやって無事に帰ってこれたら」
「これたら?」
「もうちょっと、藍州を満喫すれば良かったかなー、て」
「…ふふ。余裕だね」
「実際はそんな余裕、全然なかったんですけどね。あ、あと」
「ん?」

残っていたお茶を飲み干すと、温かいお茶を継ぎ足してくれる。

「藍家のご当主にも、ご挨拶したかったです」
「それはしなくていいもう全然気にしなくていいよ今後も気にしなくていいから」
「そ、そうですか…?」

せっかくの美味しいお茶も、あの兄達の顔を思いだした瞬間、味がしなくなるとはなんだかもったいない気がした。

「うーん、どうしても、というなら」
「はい?」
「私のお嫁さんです、と紹介するときにしよう」
「は、はい…っ?!」
「ああ、そう考えたらやっぱり帰りにでも挨拶してくれば良かったね」
「ら、ららら藍、将軍…っ!?」
「ふふ、ね、秀麗殿」
「はっ、はいっ!」

こんな時間が続くといい。ずっと、この少女と一緒に。

「この先もずっと、こうやってお茶を淹れてくれる?」
「…はいっ。もちろんです」






なんて愛しい優しい
やかな!








title by≫彼方に見た原色





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