小さな箱庭の中で






いつか、影月がいっていた。

『龍蓮さんて、秀麗さんのこと好きですよねー』
『もちろんだとも。愛すべき心の友だ!もちろん、影月も愛しているぞ』
『あー、そういう意味じゃなくてですねー』

ふと思い出した会話に、心のなかに小さな鉛のような感情が蘇る。

「…秀麗」
「どうしたの龍蓮」
「秀麗は」

出会ったときから。もしくは出会う前から。たぶん答えは出ていた。

「好きな男と世界最高峰の山の頂上から共にごろごろと落ちて死ぬ覚悟はあるか?」
「は?なによいきなり。とゆうか表現が生々しいわよ、それ」
「そうか?」
「そうよ」

「藍龍蓮」と共に生きるとは、そういうことなのだ。波乱万丈では済まないほどの人生。だからこそこの感情を受け入れてはならない。決して。

「それで、どうだ?」
「死ぬ覚悟?そんな覚悟あるくらいなら1人でも多くの人を救うことに使うわ」
「…それを聞いて安心した」
「何の話だったの、今の」
「ちょっとした確認だ」
「は?」

自分に大丈夫だと言い聞かせた。彼女は自分のために死んだりしないと。だから安心して、友人のふりをして、真実を隠して。
(愛してるなんて、)





そして自己満足に守ってゆく。





title by≫彼方に見た原色




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