幻想SyNdRomE
「運命という言葉は嫌いだな。何もかも仕組まれてるなんて、虫唾が走る」
きれいな、白い羽を指で弄びながら彼は言った。自身が掴んでいる羽に、冷めた視線だけを向けながら。
「だって、全て運命なら大聖が死ぬことも決まっていたことになるだろう?そんなこと、私は絶対に許さないし認めない」
ひらひらと、彼が地上に現れるたびに降っていた羽が、今も目の前で降り注ぐ。不思議と降り積もらないそれは、彼が具現化しているものだと知ったのはいつだったか。幻想のような光景はゆっくりと現実を排除して、拘束する鎖のじゃらりという音でさえ、遠くに響くようだった。
「ああ、でも」
独り言を呟く彼は、私に視線を合わせなかった。弄っていた羽だけを見つめて、笑う。まるで愛しい何かを見つめるように。
「私達の出逢いが運命だというのなら、それなら好きになれそうな気がするよ」
「…全て知ったうえでの出逢いが、運命ですか」
「それもそうだね。矛盾してる」
うっとりと、細められた瞳が狂気を宿した色で笑う。そして、掴んでいたその羽を手放した。
「じゃあやっぱり、運命なんて嫌いだな。私と君が、運命じゃないなら」
ふわりと地に堕ちた白くきれいな羽。
降り積もる、ことはなく。