お前を失わなければ、別の未来があったのだろうか。時折自問する。
答えはない。
「面白いことになりそうだよ、釈迦」
『余にはどうでも良いことだ』
「そう?君の大切な愛弟子が頑張る姿にも興味はない?」
存在を留めるために宿った体の持ち主がくすくす笑う。何が面白いのかと問えば、君は過保護だからさ、と答えた。
「前世では天冥戦争を終わらせるために、君から力を奪って平和を手に入れた三蔵法師。今世では何を失って、何を手に入れるんだろうね」
『何も変わらぬ』
金蝉子は後悔ごと飲み込んで選択した。失うものも手に入れたものも、すべて受け入れて。
(今世も、変わることはない)
それでも時折、もしお前が選ばなかった未来があったなら、そこでお前は幸せだったのだろうかと考える。何も変わらず、余の愛弟子として。
(…愚問だな)
自問する。
応えはない。
見ているだけの傍観者
(望みではない。願いではない。ただ思うだけ)
title by ギリア