「ねぇバニーちゃん。もし俺が死んだらどうする?」
「…は?」
 突拍子もない質問に驚いたバーナビーが読書を止めて虎徹が座っているソファへ目をやると、虎徹は楽しそうな笑みを浮かべてウォッカを飲んでいた。
「どーするの?」
 若干呂律の回っていない口調で繰り返すとグラスに入っていたウォッカを一気に飲み干した。
「いきなりどうしたんですか」
「別にぃ?」
「酔うのも程々にしてくださいよ。今コールが鳴ったらどうするんですか」
 テーブルに並べられたほとんど中身のないウォッカの瓶とグラスを取り上げてバーナビーは溜息をついた。顔をほんのり赤くして酔ってねぇよと言い返す虎徹にクッションを投げつける。
「ほら、明日も仕事ですし早く寝てください 」
「バニーも一緒に寝るんだったら寝る」
「中年男性の台詞ですか、それ」
「うっさい。おじさんはバニーちゃんと一緒に寝たいの。わかる?」
 虎徹がバーナビーの腕を掴んで力説した。
「……わかりません」
 グラつく理性をどうにか保ちながら否定する。さすがに酔っ払いをどうこうする程バーナビーは欲望に素直ではない。
「ほら、早くベッドに行ってください」
 ソファから動く気もない虎徹を無理矢理立たせて寝室まで運ぶ。
「バニーも寝るの?」
「キリのいいところまで読み終わったら寝ますよ」
「じゃあ俺待ってる」
「あなたは一刻も早く寝てください」
 ベッドに寝かせて布団をかける。これではどっちが年上かわからない。
「あー、バニーちゃん今笑っ ただろ」
「はいはい。じゃ、僕はこれで」
「バニーちゃんがここにいないと俺泣いちゃうんだけど」
「勝手に泣いててください」
 恋人とはいえ酔っ払いの相手をしている程、バーナビーも暇ではない。連日立て込む取材と撮影とヒーロー業のおかげで、落ち着いて読書を出来る時間さえ貴重なのだ。
「ベッドが水浸しになっても知らねーからな!」
 捨て台詞を吐く虎徹に心中申し訳ないと謝罪をしながら寝室を後にする。どうせ明日になれば忘れているだろうが、埋め合わせに昼飯でも奢ろうかと考えながら虎徹が座っていたソファで読書を再開する。
 *
 区切りのいいところまで読み終えて栞を挟んだ頃には夜は明けかけていた。腕時計に目をやると針は3時55分を指していた。確か、今日は9時出社の予定だったはずだ。3時間程度は眠れるだろう。バーナビーは寝室の扉を開ける。キングサイズのベッドの真ん中で虎徹が大の字になって眠っていた。
「全く、この人は…」
 すやすやと眠る虎徹をベッドの隅へやり隣に寝そべり布団を被る。
「夜、自分が死んだら僕はどうするのかって訊きましたよね。あなたを一人で逝かせるわけないじゃないですか」
 抱き寄せて囁く。
「死ぬ時も一緒ですよ」




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