[今日の放課後体育館裏で待つ]
下駄箱を開けると一枚の封筒が入っていた。嫌な予感しかしない。
「げ………」
『どうしたボッスン』
「きゃああああボッスンあんたそれラブレターちゃうの!」
「いや…果たし状だ」
差出人も何も書いてない真っ白な封筒。中には一枚の紙が入っていて、
[今日の放課後体育館裏で待つ。]
この性格がそのまま出たような固い字は、間違いなく――…。
「来たな」
「やっぱりおめーか、椿」
放課後、スイッチとヒメコは先に部室に行かせて、一方的な喧嘩を買う為に俺はここ(体育館裏)に居る。椿が仁王立ちで待っていた。
ちょっと引かずに聞いてほしい。喧嘩っていってもお互いが譲らないだけで知り合った頃の火花バチバチ散らしてたのとは違うんだ。そもそも喧嘩する内容でもないしまず普通なら喧嘩の議題になる事が可笑しい、可笑しいんだ。
「いい加減どちらが上か下かはっきりさせよう」
「だから!下はありえねーっつってんだろ!お前が下になれ!」
「君に組み敷かれるなんて考えられないな」
「こっちの台詞だバーカ!」
いつもこんな感じで決着はまだついてない。クラスが一緒になってからは顔を合わせる度にカッと目力で訴えられたけど、俺は気付かないフリしてヒメコとスイッチの元へ逃げる日々。
ついこの前、初めて振り返ってみればすげー寂しそうな顔してて。いつもこんな顔してたのかと思うとちょっと罪悪感なんか感じたりして。そんな時の果たし状だった。
「藤崎、僕は君が好きだ」
「あーはいはい、何度も聞いたよ」
「おい、こっちは真剣に…」
「だーかーらー俺が上な」
「………」
「じゃあ俺部活行くから」
「…君はそうやっていつも…」
腕を掴まれた。俺でも振りほどける力なのに目の前のこいつが本当に悲しそうに見つめるから動けないでいる。
「………」
「………」
「…なんだよ、んな顔すんなよ、俺が悪いみてーじゃん。だって可笑しいだろ」
(男なのに、兄弟なのに)上じゃないと嫌だ、そう言えばそれ以上の関係になることはないから。本当は上も下も関係なくてただ怖かった。
「僕は君だから…男とか女とか関係なくて君が好きなんだ」
「お前…そんな簡単に……」
俺がずっと考えてて、考えてたけど答えは出さないようにしてた事を椿は何の躊躇いも無く言いやがった。なんだろう、こっちが情けなくなるくらい簡単に。
「僕だって色々考えた。でも好きなんだから仕方ない」
こいつはきっと俺よりいっぱい考えたんだろう。ずっと悩んでたのが嘘みたいにスーと心が軽くなった気がした。
「…そっか、しょうがねーよな」
この瞬間から本気の上下争奪戦に発展する事になる。
愛されボスは校則違反!