「はじめまして、ですね。」
「ええ、初めまして、謙信公。」
優雅に微笑んだ神殿は美しかった。
「いきなり、てんじょうからくるとはおどろきました。」
「無礼をお許し下さい、私はあなたの剣に会う訳にはならないのです。」
「つるぎのどうほうでしたね。」
和やかな雰囲気を漂わせるが、それに流されないのは私が忍だからだろうか。
「………謙信公はあの娘をどうなさるおつもりか。」
神殿が長い睫毛を伏せた。
そして、私を真っ直ぐ見た。
「…いまやつるぎなしで、わがぐんのさくはなりたちません。しかし、かのじょをこのままにしておくのは、こころぐるしいです。」
沈黙が続く。
…酷い返答ならば斬り殺してやるつもりだった。
「私とかすがは言わば姉妹のようなものです。」
「ええ、きいていますよ。」
「……あなたを殺すと言った時に、あの娘は本気で私に牙を剥いた。」
あんなに可愛がっていた妹にだ。
「………私が間違っているのも、未熟な忍であることも分かっているのです。」
「いいえ、あなたはりっぱなしのびですよ。あなたのつよさはつるぎによくにています。」
私がかすがの目を信じてやれなかった。
あの娘は私の知らないところで、美しい剣へといつのまにか成長してしまっていた。
それが認められなくて、認めたくなくて、こんな無様な結果を招いた。
「………あの娘を苦しめたなら、つるぎが姉があなたを貫きましょう。」
「こころえました。」
微笑んだ神殿はあの娘を苦しめることなどけしてしないだろう。
「あの娘をよろしくお願い致します。」
頭を下げた私をかすがは見ていただろうか。
彼女が幸せと思えるのなら私に出来ることはもうない。
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