ふと、痛みに目が覚めた。
映る天井は低い。

「弱い娘。」

それゆえに可愛らしくもあるのだが、それならば何故修羅の道を選んでしまったのか…。
やはり、あの娘に忍は向かない。

「お目覚めでござりまするか。」

戸が開き、現れた女はよく見知ったその人だった。
私は微笑む。

「どうやら迷惑をかけてしまったようですね。すまないね、まつ。」

「困っているときはお互い様でございましょう。」

優雅に微笑む彼女は強い。
あの娘にも彼女のような人生を歩んで欲しかった。
彼女はとても幸せそうだ。

「久しいが、皆は元気か?」

「ええ、犬千代様も慶次も食欲旺盛にございます。」

「そうか、なら良い。まつ、つかぬ事を聞くが良いかい?」

「何なりと。」

「そなたは幸せか?」

一瞬、呆気にとられたかのようにまつは目を丸くした。
だがすぐに優しく微笑んだ。

「はい、とても。」

その目は私の方向を向いていると言うのに、私は映ってはいないのだろう。

「妬けるものです。」

「まあ!」

朗らかに笑う彼女は本当に輝いていた。





彼女の幸せを奪うものがあれば私に言いなさい。

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