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自己抑制

※もう二人が既に付き合っているというif設定でお願いします。


「はぁ……」
「………?」

どうしたのだろうか。いつも笑顔の彼が今日はずっとため息をついている。
俺がなにかしてしまったのかもしれないと思って、黙っておとなしく隣で座っていたのだけれどもしかしたらそういうわけじゃないのかもしれない。
疲れているのだろうか。
ソファに座って紅茶を飲む彼の顔をちらりと覗き込んでみると、目の下に隈が見えた。

「あ、むろさん…」
「ん?どうしたんですか晶太くん。」
「あ、…なんでもないです…」
「………??」

やっぱり俺に向かって笑いかける彼の笑顔はいつもより疲れていて、いつものふわふわしたものではなかった。
お仕事がいそがしいのだろうか…。
もしかしたら俺が何かして疲れさせているのかもしれない、そうだとしたらすぐに謝らないと。

「えっと…ごめんなさい…」
「…へ!?どうしたんですか急に…!?」
「俺のせいで、……」
「…ん?晶太くんはなんにもしてないですよ?」

俯く俺の顔を覗き込んで、優しく笑いかけてくれる。
謝ってみたはいいもののどうやら俺のせいじゃないみたいだ。
だとしたらやっぱりお仕事だろうか。
どうしたら彼は元気になってくれるだろうか。早くいつもみたいにふわふわと笑いかけてほしかった。

「………、…」
「……?どうしたんですか?」

俺は、なにか行動しようとソファから立ち上がって彼の前に立った。
安室さんはそんな俺をぽかんとした顔で不思議そうに見ている。
彼のキラキラした綺麗な瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
前までの俺だったら目を見ることなんてできなかったのだけれど、見れるようになって良かったと思う。彼以外の人ではまだうまくいかないけれど。
紅茶のカップを持ちながら不思議そうにする彼に少しずつ近づいた俺は、正面から控えめに彼の膝に乗った。

「……っ!?」

驚いたように息を呑んだ彼は、カップを持ったまま硬直している。
俺は気にせずに彼の首に腕を回して抱き着いた。
いつも、俺が寂しい時に彼はこうやって抱きしめてくれるのだ。
俺の体では彼を包むことはできないからとりあえず抱き着いてみたのだけれどどうだろうか。

「透さん、大丈夫です、よ」

彼のいつものセリフを言いながら、さらさらの髪の毛をぽんぽんと撫でる。
なんとなくいつもと違う呼び方をしてみた。
すごく近くで彼の香りがして俺の方が安心してしまいそうだ。我慢できなくなって俺は彼の首に頭をぐりぐりと押し付けた。
安心してこのまま眠ってしまいそうになっていると、今まで固まっていた彼が我に返ったように前に屈んでティーカップを机に置いたようだった。
突然傾いた体に驚いて彼にしがみついた。

「わっ……」
「……はぁ……晶太くん…」
「へ…?ご、ごめんなさい…」

再びため息を吐く彼にびくりと反応する。
もしかして、怒らせてしまっただろうか…勝手に触ったのはまずかったのかもしれない。
急に俺に触れられて迷惑だったのだろうか。

「離れます……」
「…嬉しいです……」
「わぁっ……?!」
「でも、もう我慢できなそうです。」

おとなしく彼から離れようと思って立ち上がると、手を引かれて再び彼に抱き留められた。
驚いてぎゅっと彼にしがみつく。
彼の胸に縋りながら、少しだけ乱れた息を整えた。
どうやら、喜んでもらえたようで少しだけ嬉しくなった。元気になってくれるだろうか。
でも、我慢とは一体どういうことだろう。不思議に思って彼の顔を見上げた。

「……??」
「…晶太くん、ごめんなさい。」
「…へ…ひゃあ!?」

突然、彼の手が俺のシャツの中に入ってくる。
驚いて大きな声が出てしまった。
背中をするすると撫でられて、なんだかくすぐったくてびっくりして俺は彼の首にぎゅうぎゅうと抱き着いた。

「あ、あむろ、さ…ひ……ぁっ…」

俺は必死に首を振って嫌だと意思表示をするのだけれど、彼の手が止まってくれない。
脇腹を撫でられるとゾクゾクと腰に電流が走ったような感覚がする。
知らない感覚に、怖くなって彼の服を必死に掴んだ。

「大丈夫です。」
「あっ…や、…っあ…っひゃあ」

彼は俺を引きはがすと、シャツの前を捲り上げてそのまま胸に吸い付いてきた。
逃げようとしても彼の手が腰に回っていて逃げられない。
彼の頭を必死に掴んで抵抗するけれど力の差が歴然だった。

「ふ…も…やだ…っあ…んん…ひゃ…っ」

ちゅうちゅうと吸われてわけがわからず体がびくりと反応する。
お腹や胸をぺろぺろと舐められる感触に、力が入らなくなって彼の頭を抱きしめているような体制になってしまった。
いつもなら優しいはずの彼が何も言ってくれないのと、知らない感触がどうしようもなく怖くて涙が出てくる。
もしかしたら俺が何か怒らせるようなことをしてしまったのかもしれない。

「ふぇ……んんっ」

ぽろぽろと涙を流していると、彼が俺の体から顔を離して目尻にキスをして涙を飲み込み、そのまま唇にもキスをした。
何度もかすめる唇の感触に、目を閉じて彼のシャツを掴んで必死に耐える。もう驚いて涙は引っ込んでしまった。

「うわぁっ…!」
「………っ…」

そのまま、勢い余って彼と一緒にソファに倒れ込む。
驚いて彼を見上げると、俺の手首を握っている彼も俺を見下ろしながらなんだか驚いているようだ。
ずっと目を見開いて固まっていた彼はそろそろと俺の手を解放すると、そのまま覆いかぶさって俺を優しく抱きしめた。

「……晶太くんごめんなさい」
「……え??」
「もっと大切にします……ありがとう元気になりました……」
「………よかったです」

俺の首に顔をうずめながら突然謝る彼に驚いた。
どうやら元気になってくれたみたいだ。
俺はなんだか嬉しくなって、再び彼の頭を抱きしめて子供をあやすようにぽんぽんと撫でた。

そして、そのまま二人で眠ってしまってお昼寝をしたのだけれど、彼の体重に息苦しくなった俺が先に起きてしまうのだった。