×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
戯れ

※本当にぬるいですが、注意
※管理人の書きたいところだけ書いたおまけのようなお話です。
※知り合ってしばらくたっていますが、付き合っているかどうかはご想像におまかせします。


「風見さんって、全然僕に手出してくれないんだね」
「は…!?手って…!」

隣同士、座りながら俯いた僕は風見さんにそう呟いた。
彼は俺の言葉を聞くと困惑したような声を出しながらほんのりと頬を染める。
また、困らせてしまっただろうか。
兄の存在もあって、風見さんがなかなか僕をそういう目で見ることができないのもわかっている。
これは僕の我儘にすぎない。

「だから、何度も言うけどそういう事は軽々しく…」
「軽くないよ。ねぇ、風見さん。僕は、やっぱり子供じゃない」

そうやって、困ったらすぐ子供扱いするんだ。
困り果てた顔の彼をまっすぐに見つめて、大きな手に指を絡ませる。
ぐっと息を詰まらせた彼は空いている方の手をこちらに伸ばして、僕の頬に触れそうなぎりぎりのところでその手を止めた。
行き場のなくなったその手は、ふらふらと空中を彷徨ってから元の場所に戻っていく。
意気地なし。
近づいたその手から伝わってきたぬくもりで、自分の頬も染まっていくのが分かった。

「初めて会った時は、あんなに大胆だったのに」
「あれはっ…力の差を見せつけて、強い大人に抵抗出来ないことを知ってもらわないと…」
「抵抗できるよ」
「できない」

「できるって!」そう頑固に言う僕の手首を握った風見さんは口を噤むと、少しだけ怒ったように眉間に皺を寄せた。
そして、力強く僕の肩を押す。
抵抗もせずに後ろに倒れた僕は上から覆いかぶさってきた彼の顔を真っ直ぐに見つめた。
僕の顔の横に手をつくと、少しだけ後悔したように僕から視線を逸らす。
ほんのり赤くなった彼の耳が見えて、眉間のしわもあまり怖くない。

「ほら、抵抗して。力、入れてみて」
「…うん」
「ほら、抵抗出来ない。あんまり大人を煽るものじゃない。それに君は特に、自分の容姿に自覚を持った方がいい。危険なのは君なんだから」
「しないもん…」
「え?」
「風見さんには、抵抗しない」

潤んだ瞳で見つめる。
風見さんは僕の顔を見ながらその瞳を大きく見開いて、じわじわと茹でられたタコみたいに赤くなっていった。
握られた手首に少しだけ力が加わった。
焦らすように彼から視線を逸らすと、色々な感情を抑え込むように、唾を飲み込む音が聞こえる。

「…っ、君…は…」
「ねぇ、風見さん。お願い」

控えめに服の裾を握って引っ張ると、真剣な顔の彼と視線が交わって心臓が煩く音を立てた。
しばらくすると覚悟を決めたのか彼が覆いかぶさってきて、隙間を埋めるように僕たちの身体が密着した。
シャツ越しにぴったりとくっついた胸から彼の早い鼓動が伝わってきて、思わず握られた手首を動かす。
目の前に見える肩に手を置くと、自分とは違ってすごく肩幅が広いのだとわかった。

「ねぇ、風見さん」
「……っ、抵抗してみてください」
「…え?」

なかなか動かない彼に痺れを切らして話しかけると、本当に小さな声でそう言われた。
その意味が理解できずに首を傾げる。
すると、風見さんは俺の耳にその唇を近づけて、少しだけ息を吸った。
なにをされるのか分からない緊張で、足に力が入る。

「…愛してる」
「…っ…ン、…ぅ」

その刺激に思わず、鼻から抜けたような声が口から漏れる。
耳元で囁かれた彼の低い低い吐息交じりの声は、僕の鼓膜を優しく揺らした。
その振動はまるで僕を攻め立てるようにゆっくりと、背中を撫でるように滑り落ちていく。
腰がぞくぞくして、彼の肩に置いた手が震えるのを抑えられなかった。

「好きだ…」
「っ…ゃ…ちょっと…待っ…」
「可愛い」
「ン…ぅ…」

普段の彼からは考えられない甘い言葉が次々と僕の耳と心臓を刺激する。
たまに狙ったように息を吹きかけられると、自分の意志とは関係なく体が大袈裟に跳ねた。
触られている訳じゃないのに声が出てしまうのが恥ずかしくて、視界が涙でぼやけていく。
たまに、彼のかけたメガネのフレームが頬を掠めたけれど、その唇が僕の耳に直接触れることはなくて。
耳の横に投げ出した僕の手の平にキスを落とすそのリップ音すらも、今の僕にとっては刺激になった。

「なまえ」
「か、ざみさっ…ん…っ」
「愛してる。なまえ」

だんだん思考が回らなくなって、自分の吐き出す吐息が高くなっていって。
漏れてしまう声を聞かれるのが恥ずかしくなった僕は、手の甲を口元に当てた。
抵抗なんて、とんでもない。
耳元で愛おしそうに自分の名前を呼ばれるたびに、身体が震えて力が入らない。
掴まれている手首に一生懸命力を入れていると、意地悪な大人は、最後にとどめだとばかりに僕の耳に舌を這わせた。
一番強い刺激に、投げ出された足が空を蹴る。

「…っひ、あ、ンっぅ…も、ゃめ…て」
「……どうだなまえくん。抵抗出来ないの、わかったか?」
「ぁっ…わ、かっ…た…から」
「あまり大人をからかうなよ」

風見さんはそう言うと、くったりと力の抜けた僕を解放した。
ぴったりとくっついていた体が離れていって、火照った体が冷やされていく。
涙でぼやけて見える視界はまるで世界がとろけてしまったみたいだった。
どうしよう。触られてないのに、気持ちいい。
与えられた刺激の余韻で、喉がひくりと震えた。

「っうう…獣…汚い大人だ…」
「だから何度も言ったじゃないか。気を付けろって」

彼は恥ずかしいのか顔を赤らめたまま、僕から視線を逸らして頬を掻いた。
恥ずかしいのは僕の方だ。
あんな声、出すつもりなかったのに。
でもあんなにたくさんの愛を貰うことができるのなら。そう思うと僕の頬はさらに熱を持ち始める。
思い出したら恥ずかしくなってきて、顔を隠すように俯いた。

「風見さんに気持ちよくしてもらっちゃった」
「んなっ…っな、…えっ」

恥ずかしさを紛らわすように口を開くと、僕の意地悪な台詞を聞いた彼は口から意味のない言葉を漏らした。
自分の行動を思い出して、恥ずかしくなったのかすぐに首まで赤くする。
相変わらずの反応に笑みが零れた。
これで、おあいこ。
もう一度彼の大きな手に指を絡めた僕は、少しだけ目を細めて視線を逸らした。

「はぁ…降谷さんに知られたら…」
「兄さんは関係ないでしょ」

その何度目かわからないやり取りをしながら、起き上がった僕は項垂れる風見さんにぴったりと寄りかかった。
すると彼はいつものように、困ったようにこちらに微笑みながら僕の頭を撫でる。
彼の指が髪の毛を何度も通り抜けるのを感じながら、僕は先ほど彼から与えられた愛の言葉に小さな声で返事をするのだ。