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深海遊泳


…眠れない。
明日は朝が早いというのに、こういう時に限って、困ったことに俺の体はうまく寝てくれないようだった。
そして何故か今日は同じベッドに秀一が寝ているということもあり、俺の体は強張っていて余計に眠れない。
いつも二人で寝るときには俺が先に眠って、そこから煙草を吸い終わった秀一が潜り込んでくるのだが今日は二人で一緒にベッドに入ったのだ。
今すぐ出ていけと蹴とばしてやりたい気分だった。
俺は秀一に背中を向けながら掛布団を抱きしめて懸命に目を閉じた。
そもそも、秀一は寝ているのだろうか。


………あいつは、いつも死んだように眠るのだ。
寝息もほとんど聞こえなければ、あまり寝返りを打たないように思う。
本当に生きているのか、寝顔を見ているといつも少しだけ心配になった。
目の下の隈も、いつもあるので慣れてしまったがもしかしたら普段あまり眠れていないのかもしれない。
そう考えて、俺は先ほどからずっとベッドで硬直して固まっていた。


「晶太…?眠れないのか?」
「……っ…」

すると、後ろから小さく声がかけられた。
なんとなく、この年になってうまく眠れないという事実が恥ずかしくなって、俺は寝たふりをすることにする。
そもそも、どうして俺が寂しい時にすぐに気づいてくれるのだろうか。
甘えたくなってしまう。

「………晶太、」
「……わぁ…!?」

強がって背中を向けていると、突然後ろから引き寄せられた。
強引に向かい合わせにされる。
びっくりして、俺は抱き寄せている秀一の腕に包まれながら、胸に縋りついた。

「び、…びっくりした…」
「どうした、……」
「え……と………っ」
思わず顔を上げると、すぐ近くに恋人の顔があることに気が付いた。
暫く眠れなかったせいだろうか、俺の目はすっかり暗闇に慣れてしまっていて、奴の整った顔がよく見えた。
自分の顔に熱が集まっていることがわかる。
これでは余計に眠れないではないか、と心の中で悪態をついた。
俺は顔を隠すように、秀一の胸に手を当てて頭を押し付けた。
そこでふと気づいた。

「秀一、また服着てない。いつ脱いだんだよ…」
「すまない、この方が慣れているのでな。」

ひた、と手に当たる秀一の肌は俺の体温より少しだけ冷たく、それが気持ちよくて頬をすり寄せた。
腕枕をしながら俺の様子を楽しそうに見つめていた秀一が、少しだけ息をのむのがわかった。
ぴったりとくっつくと、トクトクと心臓が一定に動いているのが聞こえてくる。

「よかった…秀一、生きてる…」
「何を言っているんだ…。あまり可愛いことをするな。」
「は…?おまえが何を言ってるんだ。」
「お前のそういう無自覚なところがたまに心配になる。」

秀一は、そう言うと俺の頬にキスを落とした。

「秀一、心配しすぎだよ。」
「心配しすぎないと、お前がほかの男に取られてしまいそうだからな。」

そういって優しく抱きしめてくる俺の恋人は、あまりにも過保護であるし、心配性なのだ。
一体なにがこいつを不安にさせているのかはわからなかったが、俺はか弱い女性ではなくてれっきとした男であるし、俺みたいな人間を好きなのなんてこの世でこいつ一人きりであるという自信があった。
じゃなかったら今までの人生で彼女が出来ないなんで事実があるわけないのだ。
どうしたらこいつの不安をぬぐってやれるのか、俺にはわからない。
俺が何度言ってやっても信じてくれないのだった。

「秀一、ちょっと離して。」
「……ん?どうした…って、なにを、…っ、」

俺は秀一にいったん離してもらって起き上がると上に着ていたTシャツを脱いだ。
秀一は驚いて固まっているようだったが、俺はなんだか恥ずかしくてたまらなかった。
俺たちはまだまだ前に進めていないし、俺から服を脱いだことなんて一度もなかったかもしれない。

服を脱いだ俺は、驚いて固まっている秀一の腕をどけると布団に潜り込んでぴったりとくっついた。

「こうすればもっとくっつけるし、秀一の体温きもちい…」
「……おい、晶太…」
「心配しなくても、俺は秀一のものだから。」
「……は、っ……」
「安心して。」

俺は、いまだに固まっている恋人の口にキスをするつもりだったのだが、慣れないことをするものではない。
狙いが定まらずに口の端にキスをした。
失敗を誤魔化すように恋人の頭を抱き寄せると、ぽんぽんと撫でる。
するとだんだん俺の方が眠くなってきて、そのままうとうとと眠りについた。


……今度は秀一が眠れなくなったのだ、と後日聞かされている。


次の日、俺は上半身に何も身にまとっていない自分の姿に一瞬固まった。
そして全部思い出すと、眠いとはいえなんて恥ずかしいことをしたのだと全力で後悔し、俺にくっついて眠っている恋人に蹴りを入れてやるのであった。