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ほろ酔い


いつもよりゆっくり風呂に浸かってしまった。
体中がぽかぽかだ。
今日はキッドの予告状が届いたそうだ。予告日に現場へ一緒にいかないか、とコナンくんに誘われて俺はすこぶる上機嫌だった。

髪の毛をタオルで拭きながら部屋に入ると、秀一が机にウイスキーを置き、新しい煙草に火をつけて本を読んでいた。

「おーい。しゅう〜。俺だぞ〜」
「うお。……危ない。火傷するぞ。」
「だから煙草やめろって言っただろ。」
「それは約束できないな。」

俺は上機嫌なテンションのまま、本を持つ手をグイッとどかすと恋人に正面から抱き着いた。秀一はあわてて煙草を上に上げている。
すこし怒られたので冗談を返したが、どうやら煙草をやめる気はないようだった。

「煙草吸ったままでいいって。秀一はこのまま気にしなくていいよ。」
「ほぉ…、」

煙草を灰皿に入れようとする恋人を制すると、俺はぐりぐりと首筋に頭を押し付けた。
煙草と、お酒のにおいがする。
キッドの現場に行けるのが本当にうれしくて仕方がない。
近くで彼のマジックを見ることができるだろうか。その喜びを秀一の体に抱き着きながら抑えつけた。

「晶太、今日は随分とご機嫌だな。」
「まあね。いいことがあったんだ〜。」
「そうか、よかったな。」

煙草を吸って秀一もご機嫌なのだろうか、抱き着く俺の頭を空いている手で撫でながら、詳しい話は聞いてこなかった。
完全に子ども扱いされている。いつもの俺ならここで引きはがして文句の一つでも言ってやるところだが、今日は気分がいいのでされるがままになる。

それにしても、だ。
秀一の体はとても筋肉質で、俺の体とはつくづく正反対だと思った。片手で俺の腰に手を当てて軽々と体を支えて煙草の煙を吸いこんでいる。
屈辱である。この機会に俺は秀一の体を研究してみることにした。
俺は恋人の肩に当てていた頭を離すと、目の前にあった首筋をべろりと舐めた。

「……っ、!?」
「秀一、絶対に動くなよ〜」

瞬間、驚いたのか身体を強張らせて硬直した恋人に満足した。
お風呂がまだなせいだろうか、すこしだけ汗の味がした。
それから俺は秀一の背中に手をまわすと、さわさわと手を動かしてみる。
うーむ、わかりにくい。そう思った俺は服に直接手を突っ込んだ。

「…おい、晶太、何をしている」

焦ったように何か言っているが俺は夢中だった。俺も筋肉が欲しいのだ。
どんなに腹筋をしても無駄な、この体とはおさらばしたかった。
背中を触り終わったが、何が何だかさっぱりだったので俺はとりあえず、腹筋から欲しいと考えて体をそらすと秀一の服をたくし上げた。
すると急いで煙草を灰皿に押し付けているのが視界の端に映る。
俺は服をたくし上げたことによって露わになった恋人の腹筋を控えめに触ってみた。
おかしい。同じ人間のはずなのに何故こうも違うのか。
なんだかさっきまでの上機嫌だった気持ちが沈んできて、イライラしてきた。
俺はそのイライラを秀一にぶつけてやるために、くすぐってやることにする。
くすぐりがこいつにきくのかはわからなかったが、脇腹なら誰でも弱いはずだと、恋人の腰を掴んだ。

「晶太、……頼むからもうやめてくれ。」
「…は?なに言ってるんだこれからだろ。」

すると今まで硬直してされるがままになっていたはずの秀一が突然俺の肩を掴んで引きはがしてくる。一体なんだというんだ。くすぐったかったのだろうか。

「…………晶太お前どのくらい飲んだ?」
「……え?」
「酒、だ。」
「……あー…?たくさん…?」

突然の質問に俺ははっきりと答えることが出来なかった。
そういえば今日は、コナンくんからのキッドに会えるというお誘いがうれしすぎて、普段あまり飲まない酒をたくさん飲んだような記憶がある。
別に酒が弱いというわけではなかったがいつもよりも飲んだような…

「…はぁ、…おまえはもう寝ろ。いいな」
「へ??眠くないよ??もっと遊ぼう」
「俺もそうしたいのだがな、今のままでは俺がもたない。」

よくわからないことを言う恋人に、俺は理解に苦しむ。
寝たくないという意志表示のために俺は秀一の背中にしがみつくと、引きはがそうとしてくるので懸命に服を握った。
しかし力では勝てずあっけなく引きはがされる。

「やめろ。寝たくないってば、」
「お前は酔うと子供っぽくなっていけないな。いい子だから寝ろ。」

そう言うと秀一は俺をソファーに横にさせた。
目に手を当てられ、視界を暗くされ優しく頭を撫でられていると、なんだかうとうとしてくる。
視界がとろりとしてきて、気持ちよくなってきた。
自分の視界をふさぐ手をどかし、俺を見下ろす恋人にふわりと微笑んだのを最後に俺はそのまま眠りに落ちた。

その後、秀一は急いでシャワーを浴びた後に俺をベッドに運んでくれたようだ。
それからというもの。俺のお酒の量は恋人によって制限されるようになった。
正直あまり守っていないが。