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口走る


「おい、いい加減タバコ控えた方がいいぞ」
「……ん、ぁあ」

言いながら、ソファーに座り隣で煙草をふかす恋人をちらりと見る。
今日は結構な時間吸うのを我慢してたらしく、心ここにあらずという様子で煙を吸い込んでは吐き出している。
その様子を見て悔しいがかっこいい、と不覚にも思ってしまう。
日々引きこもっている自分とは対照的に鍛えられた体や、煙草を持つ男らしい大きな手が魅力的だと素直に思った。
大学生で平和ボケしている自分とは住む世界が明らかに違う大変男らしい見た目を見せつけられ、さらに大事な恋人の話を聞いていないときたもんだ。
若干イライラしながらもう一度横目で見ると、知らぬ間にまた新しいタバコに火をつけていた。

「おい、秀一…」

声をかけ、太ももに手を置く。
一本目の煙草の効果で先程よりだいぶ機嫌が良くなったのか、隈の目立つ瞳をこちらに向け、フッと微笑み、タバコを持たない手を俺の頬に当ててくる。

「どうした晶太、眠いのか。」

違う。そうじゃない。なんだその、笑顔は。
普段無表情な恋人に突然微笑まれたことで思ったよりも動揺したらしい。

…もうタバコやめろって。体に悪い。

そう、言おうとしたはずだった。
しかし心とは裏腹に口から出た言葉は全く違ったものだった。

「…好きだ」

「……っ、」

途端目の前の瞳が大きく見開かれた。
普段のポーカーフェイスでは見られない恋人の表情を見て俺は事の重大さに気づく。

「あっ、えっと、今のは違くて!!!
……っそう!眠かった!眠かっただけだから!」

顔に物凄い熱が集まっているのが自分でもわかる。
顔の前で手をブンブンと振りながら身の潔白を証明する。
口を開けて呆けていた恋人は、手に持ちっぱなしだった煙草を灰皿に押し付けると、流れるような動作で俺をソファーに押し倒した。

「そうか、少し、いやだいぶ嬉しかったのだが……」
「……ぇ……ぁ……」

恥ずかしながら、俺はこの世に性を受けて21年、恋人というものを作ったことがない。
所謂童貞である。
さらにこの赤井秀一という男と付き合ってからもまだ、そういうことをした経験がなかった。
もちろんキスくらいはしたことがあったが触れるくらいの可愛いもので自分からしたことはない。

「やけに積極的だと思ったのだがな」
「え、ちょ、」
「今日こそはOKだということだろうか」

気づいた時には両手首は奴の手によって抑えつけられ、日々の鍛錬の差を見せつけられているかのように力を入れてもびくともしない。
そしてあろうことか奴の整ったむかつく顔が自分に近づいたかと思うと

「晶太……」
「ッ……ひ、ぃ…?!」

耳元で熱っぽく囁かれ、たまらなくなって目を瞑る。
こいつはこの声で一体何人の女性を抱いてきたんだ…羨ましい…俺にもモテ期が欲しかった…。
関係ないことを考えていると、抵抗できないのをいいことにシャツに手が入ってきた。
自分の体とは対照的な冷たい感触にびっくりして声が出そうになる。
そして目の前には我慢できないという切羽詰まったような恋人の表情。

もう、だめだ。顔に熱が集まりすぎて何も考えられない。

そして、頭が真っ白になった俺は幸か不幸かシャツに手を入れるために開放された右手を恋人の頭に思い切り振り下ろすのだった。