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無意識


「秀一…あつい…」
「そうだな。」
「もう夏だよ。さすがに男二人同じベッドはきついって…布団敷こう……俺が無理…」
「だからリモコンの電池を買えと言ったんだ。」
「うるせー!エアコン付けたってぴったりくっついてたら熱いだろうが!」

今日は珍しく晶太の部屋で集まっている。
ベランダで煙草を吸いながら、ベッドで駄々をこねる恋人の愚痴に耳を傾けた。
まだ夏本番というわけではないけれど、もう夜でも外にいるだけでじんわりと体が汗ばんでくる気温だ。
昼間、エアコンをつけようとしたらリモコンの電池が切れていて使えなかったのだ。
だから俺は電池を買えと言ったのだが、晶太はすっかり忘れていたようだ。

「俺が布団でいいから…秀一はベッドな…」
「わかったわかった。」
「やったぁ…快適な睡眠は大事だ…」

煙草を灰皿に押し付けながらカラカラと網戸を開けて部屋に入ると、恋人がベッドの上でぐったりとしている。
どうやら暑さには弱いようだ。
冷蔵庫を開けて、麦茶を取り出してコップに注ぐと寝転んでいる恋人に起きて飲むように言いながら差し出した。

「ありがとう…明日絶対電池買う…」
「そうだな。」
「というか今日こんな暑いとか聞いてねぇよ…時計の電池とか出してもいいかな。時間も目覚ましも携帯しか使ってないし…」
「いいのか?」
「いい…というか俺って天才かもしんない…」

今までぐったりしていたのが嘘のように勢いよく飛び起きると、置時計に飛びついて電池を取り出し始める恋人を眺める。
コロコロと表情が変わって見ていて飽きない。

「うわぁーーーーーーっ!」
「…どうした?」
「サイズが違う……もうだめ…こんな絶望感最近なかなか味わってない……」
「残念だったな。」
「俺もうこの時計嫌い…。」

勝手にひっくり返されて電池を取られて嫌われた時計が不憫だ。
と思いながら時計を投げ捨てて再びぐったりと寝転ぶ恋人を眺めた。

「扇風機だけじゃ限界がある…暑い…夏の馬鹿……」
「もう布団敷くぞ?」
「秀一が敷いて…うごけない…」
「はいはい。」

恋人のわがままに少しだけ笑いながら腰を上げて、布団を敷き始めた。
床に用意していたから広げるだけだ。
広げた布団に腰を下ろして、再びベッドの恋人を眺める。
…短パンから覗く汗ばんだ太ももを触りたくなった。言ったら殴られそうだから言わないけれど。

「秀一…暑い…」
「あぁ。」
「聞いてんのか…!……っおりゃぁ!」
「うわっ」

短パンやタンクトップから覗く肌を眺めていると、今までぐったりしていた恋人が突然こちらに飛びついてきた。
突然のことに驚いたけれどなんとか受け止める。

「……暑いんじゃないのか」
「うるせー!涼しい顔しやがって!くすぐってやる!」
「…………」

言うと、俺の脇腹を掴んでこしょこしょとくすぐり始めた。
楽しそうな恋人を見て少しだけ幸せな気持ちになった。
しかし全くくすぐったくない。どうやらくすぐりは下手くそなようだ。

「なぜ効かない…お前人間か…?」
「今度は俺だな。」
「へ…?わぁ……っひゃあ!?」

俺は絶望した表情で腰を掴む恋人をそのまま布団に押し倒すと同じように腰を掴んだ。

「っあははは……うぁ…やめろ!ははは……」
「弱いのか?」
「弱い!弱いから!やめ…あはははは…っはぁ…やめ…苦し…………降参!っひゃぁ…っあ参った…まいったぁ…やめてぇ…っ」
「……良し」
「……っは…っ…し、死ぬ……はぁ…」

反応が良くて楽しんでいると、抵抗が少しずつ弱っていく。
最後は半分泣きながら謝ってくる恋人を離してやると、布団にぐったりと体を預けて息を整えているようだ。

「……もう…だめだ…っは……ぁ…」
「……っ…」

……エロい。
抵抗によって乱れてタンクトップから覗いた腰であるとか、汗ばんだ肌。
そして息を整えるために上下する胸や、開けた口からちらりと覗く真っ赤な舌、上気した頬。
いつもは前髪で隠れた額が晒されていて、目に涙をためてとろりとした表情をしている恋人が自分の下で寝ころんでいた。

「……秀一のせいで余計暑くなった…もう我慢できない。」
「俺も我慢できない…」
「……はぁ?…ぎゃあっ…!?…んうっ…」

俺は恋人の顎を持ち上げると口から覗く舌にそのまま噛みつくようにキスをした。
突然のことに驚いたようで、恋人は手足を強張らせて色気のない悲鳴を上げた。
そのまま、タンクトップの中に手を滑らせて舌を口の中に入れる。

「ん…ふぁ……あ……」

どうやらまだこういうキスにはなれないようで、目をぎゅっと瞑りながら俺の肩を押して抵抗にならない抵抗をしている。
舌を吸い上げるとびくりと足に力を入れているのがわかった。
今日はこの辺で勘弁してやろう。そう思って唇をべろりと舐めて口を離した。

「……へ…変態……はぁ…ふざけ……」
「うまそうだったからな。」

晶太の口の端を流れる唾液を親指で拭い、それを舐めながらふっと微笑む。
すると、ボンッと音がしそうなほど顔を真っ赤にした。
突然両腕で顔を隠して悶え始める恋人に、疑問を投げかける。

「……?どうした?」
「お前も大概天然だよな…ずるいだろ…」
「……?」
「むり…かっこいい……お前かっこよすぎ……ずるい…俺も彼女欲しかった…」

よくわからないが褒められているようだ。
突然怒り出す恋人がなんだか可愛らしくて頭を撫でながら笑う。
何度もキスをしているのにずっと反応が初々しいままの恋人が本当に愛しくて仕方がない。

「あーーー!もうっ!お前のせいで余計暑くなった!」
「そうだな…暑い…」

先ほどのじゃれ合いで汗を無駄にかいてしまったようだ。
額から汗が流れてくる。

「もう我慢できない!今からコンビニ行って電池買う。」
「わかった。わかった。」
「秀一が払うんだかんな。あとアイスも食べたい。」
「了解。」

むくれる恋人のわがままな欲求を満たしてやるために額にキスを落とすと立ち上がり、出かける支度をする。
今夜は快適に眠れそうだ。