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飛び込め


俺は今ソファーで煙草を吸い込みつつ、俺の足の間で床に座りながら本を読む恋人のつむじを見つめている。

「晶太、」
「ん……」
「隣座らないのか?」
「……ん…」

ずっとこの調子で上の空だ。
もしかしたら俺が何かしてしまっただろうか。
全く身に覚えがないのだが、こいつは俺の声など聞こえていない様子だ。
先程シャワーを浴び終わってこの部屋に来たかと思ったら俺の足を広げて間に割り込んでからずっと。
普段なら隣に座ってくるのだが今日は違うようだ。

いつものように煙草をゆっくりと吸い込み、吐き出しながらなんとなく恋人の頭に手を置いてみた。
乾かしてきたのだろうけれどすこしだけ水気を含んで暖かい髪の毛にするすると指を通す。
するとすこしだけぴくりと反応を見せた。
なんだか面白くなった俺はしばらく髪を触って遊ぶことにした。
普段ワックスをつけている晶太の黒色の髪の毛は今ぺたりと落ち着いていて指の間を抜けていく感触が心地良い。
……これは楽しい。
いつもならそろそろ俺の手を払いのけてこちらを睨みながら怒り出すはずなのだが、いまだにしんとしている恋人がすこしだけ心配になった。

「……晶太、なんかあったのか?」
「………ないよ。」
「……そうか。……。」

やはりなにか怒っているようだ。
俺は名残惜しさを感じながらこれ以上怒らせないようにそっと恋人の頭から手を離した。
いつものようにぽこぽこと怒ってくれればわかりやすいのだけれど、こうなってしまうと全くわからない。

原因を考えながら、咥えていた煙草を灰皿に押し付けて新しいものに火をつける。
そして結局考えるのをやめて俺も本でも読もうと机の上の小説を拾い上げて開いたのだった。


「……ん?晶太?」
「…………」
「どうした…?」
「なんでもない……」

しばらく夢中で本を読んでいると、足にさわさわと触る感触があって俺は現実に意識を引き戻された。
どうやら俺の足の間にいる恋人が俺の足を触っているようだ。
気になって聞いてみるのだが、何でもないの一点張りだ。
もう本は読んでいないようで先程まで手元にあったはずの本は足元に転がっていた。
片手でズボンをぎゅっと握って引っ張り、逆の手で俺の足の指の間に指を絡められる。
膝に頭をぐりぐりと押し付けながら足の甲をするすると撫でられていると、なんだか自然とムラムラとした感情が芽生えてくる。
……こいつは、狙ってやっているのだろうか。
晶太はいつもそういう事を無意識でやるから本当に心配で仕方が無い。
少しわからせてやろうと俺は本を閉じて横に置き、恋人の頭に手を置きながら口を開いた。

「あまり、可愛いことをするな。」
「…………」
「……犯すぞ」
「…………いいよ…」
「…………は、…っ?」

脅すつもりでいった言葉に、予想外の反応が帰ってきたので思わず反応が遅れた。
驚いて煙草を落としそうになって慌てて持ち直す。
いつものように大声で怒りながら腹でも殴られることを予想していたのだが、
こいつは今、なんて言った……?

「…………ちゅーまでならいい。」

その言葉に視線を下に移すと首までほんのり赤くした恋人が足の間にちょこんと座っている。
……今のは流石に

「キた、な……」
「…変態。」

俺は我慢出来なくなって灰皿に煙草を素早く押し付ける。
そして体育座りをして足に顔を埋めて恥ずかしがる恋人の顔を無理矢理こちらに向かせると、前に屈んで上から噛み付くようにキスをした。

「……んん…っ…」

角度を変えてキスをしながら唇を甘噛みしてやるとびくりと反応する。
目をぎゅっと閉じて俺の足を握る恋人の反応を楽しんだ後、体制が辛そうだったので一旦口を離した。

「……秀一、…足りない」
「……っ、お前は…」
「もっと……」

一体どこでこんなねだり方を覚えて来たのか。
晶太は体制を変えてこちらを向くと、膝立ちになりながら俺のシャツを控えめに握って俺を見上げてくる。
俺の唾液で濡れた唇とすこしだけとろりとした瞳が非常に官能的で、俺はもう我慢することが出来なそうだ。

「……晶太、舌出せるか」
「……?…こう…?」

俺が指示するといつもの恋人ではありえないくらい素直に言うことを聞いた。
もしかすると、ただ知識が無いだけかもしれないが。
控えめにちらりと出された舌に向かって俺は前に屈み、そのままかぶりついた。

「……ひゃっ…?!…ん、んん……ふ」

足の間にいる恋人の頭の後ろと顎に手を添え、顔を固定して逃げられないようにする。
自分の舌を晶太の舌に絡めて、時折吸い上げてやると大袈裟に体が跳ねるのが分かった。
俺のシャツを握る強さが少しずつ弱くなってくる。

口の端を流れる唾液を拭ってやりながら、歯列や上顎を何度も舌でなぞっていると鼻から抜けたような声で小さく喘いでいる。

「…やっ……んぅっ……も…っぁ、」

頬を染めたとろとろとした顔で目に涙をためてこちらを見ている恋人が愛しくて仕方がない。
そのままキスを続けていると、ふとシャツを握る手が落ちて体から力が抜けたので咄嗟に背中を支えてやり、唇を吸いながら口を離した。


「……は、ぁ……っは……んっ、」
「どうだ?気持ちよかったか?」
「……ん……。」

俺に背中を支えられ、腰に抱きついて呼吸を整える恋人に意地悪くそう言ってやると、耳まで赤くしながら小さく頷いてみせる。
……本当に可愛らしくてどうすればいいのか。
しばらくすると、晶太はおもむろに立ち上がると俺の膝に乗って首に抱き着きながら頭をぐりぐりと押し付けてきた。

「…っ、…晶太、」
「…………こういうことしたい時のねだり方が、わかんなかったから…」
「…、もうすこし素直に言ってくれ……」

俺の心臓がもたない。

「はぁ?!なんか文句あるのかよ!!」
「…むしろ歓迎だが、お前の体の保証ができない。」
「っへ?……うわぁ?!ちょ、秀一、ちゅーまでだって……、」

あんなに可愛くねだられてキスまでなど約束できるわけがないだろう。
すこし乱暴に恋人をソファに押し倒すと、ぽこぽこと怒り出すのでもう1度その唇に噛み付くようにキスをした。

「キスまでというのがどこまでか分からないな。教えてくれないか、晶太。」

俺の下で顔を青くしている恋人にそう囁くと、俺は恋人の肌に手を滑らせた。