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幸福の作り方


俺は秀一と約束をしていたので学校の帰りに工藤邸にやってきていた。

そこまで毎日のように頻繁に会っている訳ではなかったが人の家、しかも主がいないのにこんなことをしてていいのだろうか、なんて思ってしまう。
他人の家のベッドで2人で眠って、し、しかも最後までするわけじゃないけれどそういうこともするわけだ。
人の家、そう考えると俺はなんだかいつも恥ずかしくなって秀一を拒んでしまうのだった。
俺の無駄なプライドも秀一に甘えることを邪魔している一つの要因なのだけれど。
今度、狭いけれど俺の家に招待してみようか。なんて考えながら玄関のドアを開けた。

「おじゃましまーす。」

そんなことを思いながらいつものように挨拶をして、いつも秀一がいる部屋に行く。
この時間ならソファに座ってタバコでも吸っているのではないだろうか。

「あれ……?秀一……?」

しかし、俺の予想は外れたようでそこには誰も座っていなかった。
今日はちゃんと来ると報告していたのにどうしたのか。
急に仕事でも入ったのかと思ったけれど、玄関の鍵は空いていた。
もしかしたらなにか良くないことでもあったのか。そんな不安が俺の心をざわつかせた。
不安になって俺はソファに荷物を下ろすとほかの部屋に足を運んだ。

「おかしいな……赤井秀一さーん……?」
俺はいろんな部屋を探して回ったけれどどこにも見当たらない。トイレに行っているわけでもなさそうだった。
それなら2階だろうかと俺は階段を上った。


「秀一……?あれ……?」
二階に上がり、ベッドルームに入るとどうやら人の気配がする。
なんだ、寝てるだけかと少しだけ安心した。

「寝てるのか……?おお……。」

盛り上がっているベッドにそろそろと近づいて覗き込むと、恋人が目を閉じて寝ていた。
相変わらず、とても静かに寝るようだ。
起きている間いつもかぶっているニット帽が外されて、服はいつも通り着ていないようだった。
貴重だ。と思った。
秀一が寝ているところなんて俺はあまり見たことがなかったのだ。
それがなんだか嬉しくて、同時に目の前で眠っている恋人がすごく可愛らしい生き物に見えてきた。

「秀一……本当に寝てるのか……?」

声をかけてみるが反応がない。
どうやら本当に寝ているようだった。
俺はそろりと恋人の顔に手を伸ばした。
いつも俺を見る綺麗な緑の瞳は閉じられているけれど見慣れた隈は相変わらずで、思わず指でなぞる。
どうして消えないのか不思議でしょうがなかった。寝ていないのだろうか。
今日もこんなに無防備に寝てしまっているのは、もしかしたら仕事が忙しいのかもしれない。邪魔してしまっただろうか。

「おお……やらけえ…」
次に、唇を触ってみた。
いつも秀一が俺にやるように、親指でぷにぷにと触る。
秀一も唇は柔らかいんだ、なんて当たり前のことに少しだけおどろく自分がいて、面白くなった。

「…………秀一。起きろ……。起きないとちゅーするぞ……」

ぷにぷにと唇を触りながら、俺はそんなありきたりなセリフを吐いた。
寝てる相手になら俺のプライドも作動しないようだ。冗談のつもりだったが、今キスすることも悪くないかもしれない。なんて考える

「寝てるんだな……?秀一。」

そう言いながら、俺は秀一の顎を持ち上げながらそっと、今度はちゃんと狙いを定めて唇にキスをした。
いつもは秀一から突然されるから全然意識していなかったけれど、自分の唇にすごく柔らかい感触がして、少しだけ幸せな気持ちになった。
まるで、これが初めてのキスのような感覚だった。

ゆっくりと唇を離すと、いったい自分が何をしたのかに気づく。
これじゃあ寝込みを襲っているようなものじゃないか!!
恥ずかしくなった俺はその場を離れるために急いで踵を返す、筈だった。

「おわっ?!?」
振り向いた途端、後ろから引っ張られた。
布団に引きずり込まれて、よく知った腕に抱きしめられた。
え、まさか、こいつ。

「寝込みを襲うとはいい度胸だな、晶太」
「お!お前ふざけんな!!起きてたのか!」
「ぁあ。あまりにもお前が可愛くてな。」
「バカにすんな!!バカ!変態!」

恥ずかしくて死んでしまいそうだった。
キスをしたことがないから自分からするのが恥ずかしくて、寝ている間に練習でもしておこうと思ってやったことだったのに。
その相手が起きているなんて屈辱以外のなんでもない!
顔が真っ赤になるのがわかる。
恥ずかしさを少しでもなくそうと、俺は秀一の胸を何度も叩いた。

「そう怒るな。」
「うるさい!」
「俺は、幸せでしょうがない」
「え……?」

俺はこんなに怒っているのに、恋人はいつもよりも優しい声で俺を抱きしめた。
驚いて俺は叩く手を止めるとぱっと顔を見る。
恋人は嬉しそうに、優しく微笑んでいた。

「秀…………」
「もう1度、してくれないのか?」

俺を抱きしめながら、奴は片手で自分の唇を示した。

「うるせえ!後悔するなよ!」
「お手柔らかに頼む。」

余裕綽々な恋人になんだかイライラが止まらなくて、
俺はもう半分以上やけくそで恋人の上にまたがり、人の家だということなんてすっかり忘れて下手くそなキスを御見舞してやるのだ。