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出来心3


(赤井秀一をからかう安室さんが大変楽しそうです。)

「晶太くん……晶太くん……」
俺は次の日、安室さんが俺を起こす声と、ガンガンと鳴り響くような頭痛で目を覚ました。
目が覚めると知らないホテルであり、昨日安室さんとご飯を食べた以降の記憶がさっぱり無い俺は、状況を把握すると顔色を変えた。

「……あ、安室さん……俺は何か粗相を……」
「大丈夫ですよ。晶太くんはお店で眠ってしまっただけで、そのあと僕はただここに運んだだけですから。」
「ひ……ご迷惑をおかけしました。本当にごめんなさい……」

どうやらお酒を飲んで潰れたらしい俺は安室さんの手によって運んでもらったようだ。
なんてことをやらかしたのだ。
本当に申し訳ない。
安室さんの言葉が本当なのは、ひどい頭痛と眩暈から伺えた。
なんという二日酔いだ……。

その後、重い体を引きずってなんとかシャワーを浴びた俺は安室さんに車で送ってもらっていた。
車の振動もキツイほどで、安室さんは俺の体調を気遣いながら運転をしてくれる。
本当に心の底から申し訳ない。
どうやら昨日のうちに秀一に連絡を入れていてくれたらしく、俺は秀一の元に送り届けられるらしかった。
昨日の秀一との約束を優雅に破っていた俺はどうやって謝れば許してくれるだろうかと怯えていた。

「晶太くん、着きましたよ。大丈夫ですか。」
「あ……大丈夫です。……すいません。」

どうやら着いたらしく、安室さんは車を止めるとわざわざ助手席に回ってドアを開けてくれた上に俺の体を支えてくれる。
本当にいい人だ。

「………………晶太」
「……ひ……秀一…さん…」

ふらつく体を安室さんに優しく抱きとめられた俺が安室さん越しに見たのは、大変ご立腹な様子で玄関から出てきた恋人だった。
見た目は沖矢昴であったが声は元のままである恋人を見て、お前それ変装の意味無いぞと教えてやりたい。

「あ、あの安室さん本当にありがとうございま……うわぁ……?!」
俺がふらふらのまま安室さんの腕の中で感謝の意を述べていると突然秀一が無理矢理俺の手を引き、乱暴に抱きとめた。
もう力が入らないのだから本当にやめてくれ。

「おい、っ晶太どうした。何かされたのか。」

どうやら腕の中でぐったりしている俺に驚いたのか秀一が俺の顔をのぞき込んでくる。
むしろ俺が何かしました。とは言えずに首を横に振る。

「人聞きが悪いですね。僕は約束通り無事に送り届けましたよ」
「……それが嘘でなければいいのだが。」
「おや、そんなに心配ならちゃんと自分の見えるところに置いておけばいいじゃないですか。悪いのはあなたですよ。」

………………何の話だ。
俺を挟んで喧嘩をするのはやめてくれ…。
そこで俺は、赤井秀一と安室透の仲が悪いという噂を思い出した。
噂じゃなかったのか……

「……うぅ……うっ……」
「……おい、っ大丈夫か。」
「せいぜい横取りされないように努力するんですね。」

どうやら大人気ない二人の言い争いは俺が体調の限界を迎えるとともに終息したようで、秀一は俺を抱き抱えると家に入っていく。
おい、恋人を送ってくれた安室さんにお礼の一つも言えないのかと思ったが言い返す体力はもうなかった。


それから俺は着替えることも出来ずにそのままの格好でベッドに入り、寝込んだ。
秀一は俺の体調を気遣ってずっとそばで付き添ってくれて、水も飲ませてくれたので大変感謝している。
昼を大幅に過ぎ、夕方頃になると体調不良もなんとか収まって、俺はベッドから這い出ていた。

「…………で、だ。」
「………………はい。」

今までこの時を待っていたのだろうか。
秀一はベッド脇の椅子に座ってこちらを威圧している。
今すぐここから逃げてしまいたい気持ちにかられたが、そんなことをしたら後が怖いので大人しく従っている。

「安室くんに何をされた。」
「……え?何もされてないと思う……けど……」
「ならどうして言葉を濁すんだ。何があったのか詳しく話してみろ。」

昨日の安室さんの話では、彼の口から秀一に詳しい話をしてくれるということだったはずなのだが、どうやら俺の聞き間違いだったのかもしれない。
それに秀一はなにか大きな勘違いをしているようだったので仕方なく、俺はひったくり犯を追うために安室さんの車に乗りその後2人で食事に行ったことを詳しく説明した。

「……はぁ、いろいろ言いたいことはあるが、まあいい。その後、は」
「……え、……と……」
「ん?」
「それが、全く記憶がありませんで。」
「…………は??」

さすがの秀一もその答えは想像していなかったのだろうか、驚いたようだ。

「……そ、それが。なんだかいつもよりいっぱいお酒飲んじゃったみたいで、起きたら朝になっててホテルのベッドで寝てたというか。」
「は……おい晶太。それは安室くんに意図的に飲まされて潰されて持ち帰られたんだ。いい加減理解しろ。……本当に何もされてないのか?見せてみろ。」
「バーカ。安室さんがそんなことするわけないだろ。それに何もされてないってば。何度も言ってるだろ。むしろ俺が迷惑かけたんだって。」
「…………」
「あれ、メール……誰からだろう」

俺が言い返すと、秀一はなにやら納得していない様子で黙り込んだ。
何回安室さんは違うと言っても、言うことを聞かないのだ。
いい加減わからせてやらなければならない。
と、そこでメールが来たようなのでなんとなく開いてみる。噂をすれば安室さんからだった。

途端、メールを開いた俺は真っ青になって携帯の画面を隠した。

「おい、晶太今……」
「なんでもない!なんでもない!」
「いいから見せろ。」
「……ひぃ………っ」

俺の反応に気づいた秀一はいち早く動くと、ものの見事に俺から携帯を奪ってみせた。

「…………誰に、何もされてないって?」
「いや……それに関してはきっとなにかの間違いで……」
「ほぉ…………」

安室さんから送られてきたのは、1枚の写メであった。

『(お酒で)頬を染めた森山晶太が、シャツの前をはだけさせながら安室透の褐色がかった手の平に頬を撫でられている。』

という大変な証拠写真である。
しかも本文には「昨日の晶太くん、とても可愛かったです」と書いてあり、眩暈がするほどの嫌がらせのような内容であった。
全く記憶にない。
身に覚えがなさすぎて冷や汗が止まらなかった。