×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
出来心2


「晶太くん、もう飲むのやめた方がいいですよ」
「あむろさん、おれまだのめます…のめますよぉ…」

あれから、晶太くんを食事に誘った僕は無理矢理言いくるめてお酒を意図的にたくさん飲ませた。
しかし、思ったより弱かったようだ。予想していたよりも完全に潰れてしまっている。

この森山晶太という少年、どうやら赤井秀一の恋人らしい。それなりに可愛らしい見た目をしていて、初めて会ったときからその見た目と人懐っこい性格から、僕もすこしだけ好意を寄せていた。しかし、気に入らないのは僕と出会ったときにはすでに奴のものであったということである。
だから、今日は赤井に嫌がらせでもしてやろうと車に彼を乗せ、無理矢理約束を断らせて食事に誘ったのだ。
きっと奴も今頃気が気じゃないだろう。

「晶太くん、晶太くん、ホテルにつきましたよ。大丈夫ですか?」
「ふぇ…あむろさん…?」
「晶太くん、僕の首に手をまわしてください。できますか?」

とりあえず、潰れてしまった彼を寝かせてやろうとホテルを予約して車を走らせた。
完全に潰れていて、動ける様子でもなかったので首に手をまわさせると、彼を抱き上げて移動することにした。


「つきましたよ。立てますか?」
「たてます…あむろさん。お酒をのみましょう」
「晶太くん、もうだめです。それにもうお酒はありませんよ。」
「おさけ、ないんですか……買ってきてください…」

ホテルの部屋について、彼を立たせてみるが、ふらふらで足もおぼつかないので後ろからしっかり支えてやる。
どうやらまだ飲みたがっているようだ。普段の彼からは考えられないわがままを言って駄々をこねている。本性はどうやら子供っぽい性格のようで、新しい彼の一面が見れたことが少しだけうれしい、そう思った。

「晶太くん、シャワーは明日にして、今日はもう寝ましょう。ベッドまで運んであげます。」
「あむろさん!いやです。おれは、お酒をのむんです……」
「暴れないで、ちゃんと捕まってください。」

子供のように駄々をこねはじめる晶太くんを僕は再び抱えなおした。きっと自分でも何を言っているかもうわかっていないのだろう。
すると、僕の肩に頭をぐりぐりと押し付けて寝たくないという意志表示をする。
とても可愛らしい。きっとこんな性格の彼のことだ。無自覚に、心を許している人には誰にでもこんなことをするのだろう。
赤井の奴も気が気じゃないだろうな。と少しだけ同情した。

「安室さん、いいにおいがしますね。あんしんします。」
「…、そうですか、よかったです。降ろしますよ?大丈夫ですか?」

僕の首に鼻を近づけてすんすんとにおいを嗅いでふわふわと笑っている晶太くんを見て、赤井じゃないが僕も心配になった。いつか悪い男に捕まりそうだ。
そんな彼に声をかけながらそっとベッドにおろしてやった。

「そのままじゃ寝にくいでしょう。晶太くん、上着だけでも脱いでください。」
「ん…動けないのであむろ…くんが脱がせてください、」

いつもと違う様子で僕の名前を呼びながら甘えてくるので僕はおとなしく晶太くんの体を支えて上着を脱がせてやる
……と、
彼の上着から何か落ちてくるのがわかった。
「携帯…」
晶太くんの携帯がチカチカと点滅している。
なんとなく拾い上げて電源を入れてみると、「秀一」の文字。何十件もの晶太くんを心配するメールや電話が入っていた。
どうやら赤井に対するいたずらは成功のようだった。

「あむろさん、どうしたんですか…」
「……なんでもないです。明日起こしてあげますから安心して寝てくださいね。」
僕の手のひらに頬を擦りつけながら甘えてくる晶太くんを見ながら、可愛らしいと思う反面さすがに飲ませすぎただろうかという反省の気持ちも沸いてきた。
なんだかいけないものを見ているようだ。

そして、もう一ついたずらを思いついた僕は、とろとろと眠りに落ちそうな晶太くんの携帯を持ち上げると、「秀一」の名前を押して電話をかけた。

『……っおい!晶太今まで何を…!』
「こんばんは。赤井秀一。」
『………安室君…?晶太に何をしたんだ。』
「人聞きが悪いですね。僕は何もしていませんよ。いまは僕の横で眠っています。」
『……っ…悪い冗談はやめろ。 今すぐ晶太に代わってくれ…』

焦ったように電話にでた赤井に、面白いと思いつつ冗談を言ってやるとすこしイライラしたような声を出した。

「冗談じゃありませんよ。僕も疲れてもう眠いので寝ることにします。」
『ふざけないでくれるか、今すぐ晶太をこちらにわたせ。』
「あした無事に送り届けるので安心してください。それでは」
『……おいっ』

何か言いたそうだったが無理矢理通話を切ってやると、明日が楽しみだと踊る心を落ち着けながら携帯の電源を落とした。
そして晶太くんにやさしく布団をかけてやり、シャワーを浴びた僕はもう一つのベッドに体を潜り込ませて眠りにつくのだった。

明日が楽しみだ。