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出来心


(安室さんが主人公を使って赤井さんに嫌がらせをします。)



今日俺は朝までかかってなんとか書き上げたレポートを大学に提出してきた。
重い体を引きずって歩きつつ、なんとかリュックを背負い直す。
毎回毎回本当にきつい。過去の自分にはコツコツやれよと提出期限になると思うのだが、やはりギリギリにやり始めるのが日課なのだった。

「……あれ?晶太くん?」
「え?あ、安室さん。」
「こんにちは。奇遇ですね。」
「……あ、こんにちは。」

突然のイケメンにびっくりした。
俺は動かない頭でなんとか安室さんに挨拶をする。
どうやら、ドライブでもしていたのだろうか。車を止めてハンドルに体を預けて休んでいるようだった。

「晶太くん疲れてるんですか?よかったら送っていきますよ。」
「へ…?そ、そんな…いいですよ。悪いです。」
「いいから。疲れている人を見過ごすわけにはいきません。乗ってください。」

そういうとイケメン安室さんは自然な流れで俺に気を使うと、
車から出て助手席のドアを俺のために開けてくれた。
こ…これは…完全に女性の扱いに慣れた動作…!!!
きっと世の中の女性なら、その爽やかな笑顔と完璧なエスコートを駆使して一撃で落とすことができるのであろう。イケメンって怖い…

「いや、でも俺…」
「…ん?」
しかし、困った。俺は今日このあと恋人である秀一と予定が入っているのである。
秀一は、わけもわからず過保護なので、安室さんに送られてやってくる俺を見たらまたグチグチとうるさく言ってくるに決まっている。
安室さんを見てわからないのだろうか。明らかに女性に困っていないのに俺にそんな気があるはずがない、と。俺は安室さんと良い友情関係を築きたいだけなのだ。


「キャ―――!!ひったくり!捕まえて下さい!!」

と、俺がどうやって断ろうかと考えていると、女性の悲鳴が聞こえた。

「うわ!?」
「晶太くん!考えている暇はありません。とりあえず乗ってください!」
「え、…え?」

安室さんはそう言いながら俺を車に押し込んでドアを閉めたかと思うと、自分も運転席に乗り込むと、車を発進させた。

「なにか予定があったなら断りの電話か何か、いれておいてください。すぐに終わるかわからないので。」
「え!?あっわかりました。」

安室さんはどうやら犯人を捕まえるつもりのようだった。
車で逃走したひったくり犯を見据えながら俺にそう声をかけてくる。
……しかたない。どうしてこんなことになったのかわからないが、とりあえず俺は秀一に連絡しておくことにした。

「もしもし…」
『晶太か、どうした。』
「えっ…と、今安室さんの車に乗ってて、」
『……は?安室君?どういうことだ』
「もしかしたら今日行けないかもしれない。ごめん。」
『おい、晶太詳しく説明しろ…安室君に何を』
「その、わぁ…!?あむろさん、…!?」

と、そこで横から伸びてきた安室さんの手によって俺の携帯は奪われ、通話の終了ボタンが押された。

「へ、あ……。」
「晶太くん、スピードを上げるのでしっかり捕まっていてください!」

安室さんは俺に携帯を返しながらそう言うとものすごいスピードを出し始めた。
「……っっっっ…ひぃ…!?」
おかしい。なんだこれは。少なくとも俺の知っている車はこんな動きはしなかったはずだ。
そもそも、俺はジェットコースターとか、早く動く乗り物は全体的にダメなのだ。
もう怖くて泣きそうだった。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

「晶太くん、大丈夫ですか?」
「だ…ダメです……安室さんお願いですから前を向いてください…」
ちらりとこちらを伺って俺の心配をする安室さんに、俺は心の底から懇願した。



「……ひ…ひぃ…死ぬかと思った…」
「晶太くん、大丈夫ですか?すいませんこちらも必死で…」
「あ、安室さんありがとうございます。」

安室さんは困ったように笑いながら缶コーヒーを俺に手渡した。
事件が終息したのは、すっかり夕方になった頃だった。
あの後も素晴らしいドライブテクニックを思う存分披露した安室さんは、自分の乗っていた車を犯人の車にぶつけて無理矢理止めたのである。
本当にあの時は死んだかと思った。
秀一の言う通りだ。安室さんの車には乗っちゃいけなかったのだ…。
こんな爽やかな顔してとんでもないことをする人だった。

「よかったらこの後食事にでも行きませんか?」
「え…、でも俺…」
「今日のお詫びもしたいですし、約束の相手には僕からも詳しい説明をして謝りますので。僕のわがままです。お願いします。」
「そういうことなら、わかりました。」

とんでもないお誘いに、俺は約束をしていた秀一のことを心配した。
しかし、安室さんが詳しい説明をしてくれるというなら、俺から言うよりも安室さん本人から説明してもらった方が秀一も納得してくれるかもしれない。
それにこんな困ったようにお願いされたら俺も断ることはできなかった。