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誘拐1


俺は今、絶賛ピンチ中である。
よくわからない薄暗い倉庫でわけもわからず頭上で手錠をはめられ、柱から離れられなくされていた。
特にやることもないので俺は唯一自由な足を床の上でばたつかせる。
俺をここに連れてきた犯人たちは、バタバタと慌ただしく動いている。

事の発端はこうだ。

いつものようにレポートにも手をつけず俺は家でゴロゴロ携帯をいじっていた。
やらなければならないことはわかっているのだが、なぜ提出物というのはぎりぎりにならないと始められないのか、気づくとやばい時期に突入しているというのが常だ。
と、そこに突然大学の友人から、今からカラオケにでも行かないかと連絡が入ったのだ。
もちろん暇を持て余していた俺はすぐに返事をすると、携帯と財布をポケットに突っ込み家を出た。

「カラオケなんて久しぶりだな。」
音楽に目がない、とまでいかないが人並みには聞くし、歌うことも嫌いではなかった。
いつもと違って暇ではない分、今日はいい日だと思いながら歩いていると、
前から見知った少年が歩いてくるのが見えた。

…………前言撤回だ。今日はやばい。
どこかに隠れられないかと咄嗟に左右を見渡すが、ここは道のど真ん中。しかも相手は向かい側から歩いてきていた。もうダメだ。

「あれ、晶太お兄さん!こんにちは。」
「あはは、コナンくん。こんにちは。奇遇だね。」

しっかり笑えていただろうか。
目の前で少年はニコニコと微笑んでいる。
しかしさすが子供。笑顔は可愛い。
それを見ていたら俺も自然に笑顔になった。

「お兄さんはどこかにお出かけなの?」
「うん。これから友達とカラオケに行こうかなって思って。」
「カラオケ…。あのね、今カラオケに向かう途中の、…………ううん。何でもない」
「ん??どうしたの?」

なにか言い難いことがあるのだろうか、コナンくんは眉を下げて俺に笑いかける。

「悩み事ならお兄さんに相談してごらん?」
「あのね、お兄さんちょっと耳貸して」
「なになに、」

俺はコナンくんの身長に合わせるためにかがんで、口元に耳を寄せた。

「あのね、今赤井さん、ある事件を追っててあんまり会えないかもって言ってたよ。
晶太お兄さんも気を付けてね。」
「……え、え、コナンくん……?それは、どういう。」
「赤井さんから連絡があったんだ。お兄さんに伝えてくれって。」
「そうなの?大丈夫大丈夫。秀一は殺しても死ななそうだし。」
「はは……」

真面目な顔をして何を言うかと思えば。
そもそも、そういう話は俺に直接言え。頼むから小学生に余計なこと吹き込まないでくれと言ってやりたかった。
殺しても死なないなんて冗談を言っていると、コナンくんは乾いたような笑いを漏らした。

「まぁいいや。忠告ありがとうね!じゃあね。コナンくんも気をつけるんだよ。」
「うん。バイバイお兄さん!」

コナンくんと別れた俺は上機嫌でカラオケに行くために歩みを進めた。

「うわっ?!」

向かう途中、大きなビルの前を通りかかった瞬間、建物の中から慌てて人が飛び出して来た。ちょうど前を歩いていた俺は突然のことに対処しきれず、尻餅をつく。

「いたた……す、すみませ………んん…?!」

崩れた体制を立て直し、上を見上げながら謝る。するとそこに立っていたのはサングラス、マスク、手には大きなカバンの明らかに犯罪をしてきましたという身なりの男。その後ろには仲間だろうか。同じような格好をした人が数人いた。

「へへ……本当にすみません。では俺はこれで。」
「ちょうどいい。お前ちょっと来い。」
「うわぁ?!」

適当に笑ってごまかそうとすると、焦ったような声を上げた男が俺の腕をつかんだ。そのまま、用意してあったのだろうか、近くにあった車に俺を押し込むとあれよあれよと今の状態に至るわけだ。


本当に……本当になんて日だ。
この状態ではどうにもならないが、携帯もどこかに落としてしまったらしい。俺はあれがないと不安で仕方が無いのだ。携帯依存症は直せない。

犯人の男達は、警察に電話しているのだろうか。一生懸命に人質をとったことや、自分たちを無事に逃がすように主張している。
途中、犯人の1人に電話を押し付けられ、鋭い眼光に負けて俺は乾いた声で
「助けてください。」
と主張させられた。

あまりにも演技が下手だったのか、突然頭を掴まれる。
「……ひぃ、ごめんなさい!!……やめてください!」
無理矢理必死な声を出させられたせいか、警察にも効果があったようだ。
痛いから本当にやめてくれ。せっかく髪の毛をふわふわにしてきたのに台無しだ。
手錠のせいで髪の毛が直せなくて若干のイライラを溜めていった。