「夢を見たんだ」
それは一体どんな夢?
腕の中で興味深そうにこちらを見上げたルシェに訊ねられれば、お前がいなくなる悪夢だったと苦い顔で返答せざるを得ない。
夢の中で俺はルシェと一頭の馬に乗っている。それも競馬でよく目にする逞しい鬣の雄馬ではなく、変な斑模様の馬だ。雄だか雌だかもわからない。身体全体は真っ黄色で、腹の辺りに青い斑点が散っている。鬣はなく、代わりに強靭な首を保護するのは鋭い棘だった。丁度、ヤマアラシやハリネズミのような。目は燃える朱色で、唇から伸びる二本の長い牙は明らかに草食動物の有するものとは違って黄ばんでいた。尾は短いが、耳と蹄は健在している。馬であって馬でない生き物に鞍を取り付け、手綱を引くのは俺だ。馬はどこまでも猪突猛進に駆ける。しかし腰にしがみついたルシェが泣きじゃくりだした。
馬はどんどん加速し、森を走り林を通り抜け、木々を揺らし枝を踏み潰した。自らが出せる最骨頂のスピードで駆け抜けた。
そうして海辺に辿り着くとようやく馬は蹄を止め、波打ち際に俺を降ろした。するとルシェがいなくなっていた。
「ルシェはどこにいる」
すると馬の牙に赤黒い汚れがこびりついているのを見た。
「俺が喰らった」
馬は言った。そこでスイッチを切ったかのように馬も海も闇に包まれ、夢は途切れた。

「そんな話だ。くだらないだろう」
「ううん。面白かったよ」
「俺は嫌だ。お前があの馬に食われたのだから」
眉間のしわを寄せてルシェを抱く手のひらに力を込めると、少女は、ここにいるよ、と微笑んだ。シルエットにすれば互いの距離がなくなるほど密着しているというのに、何故だかルシェを離したら消えてしまいそうな気がした。そんな非科学的な現象は天と地がひっくり返ってもあり得ないというのに。
「でもね、ルシェもバダップお兄ちゃんがいなくなるの、嫌よ」
悪戯っぽく笑うとぱっと身を翻して胸板に体当たりしてきたルシェを抱き止め、反動でソファーベッドにダイブする。スプリングがきしりと軋んで悲鳴を上げた。
「だってねルシェ、こんなにもお兄ちゃんが大好きなの」
ルシェは小さいけど、お兄ちゃんが好きだって気持ちはエベレストより高いんだよ。ルシェはやたら饒舌になって得意気に話す。そんな彼女を心の底から愛しいと思う。
「俺も同じだ」
「うん、知ってる」
少女の小さな頭を引き寄せると、あどけない円らな視線とぶつか
った。そして開きかけたベビーピンクの小ぶりな唇にそっと自らのそれを重ね合わせた。

――――――――――――

0403
醜い夢から覚めればハッピーエンドになるのです


「ゆりかご」のゆうみんさんから相互記念に頂きました!
え、ちょ、あああありがとうございまままま!(((
本人に言ったら間違いなく顔面粉砕でしょうけども素敵なロリコンごちそうさまでした…!←
こちらこそよよ宜しくお願いしますっ^///^
…良いのだろうか頂いてしまって…!

本当にありがとうございました!これからもstkゲッフンガッフン応援してます!






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