グッバイハロー


どうして居なくなっちゃったの?なんて疑問、持っていても仕方ないのに。
私の目の前で消えた愛しい人。貴方が居なくなってからこの世界が歪んで見える。目から溢れ出すものが私の行く先の邪魔をする。

「ねぇ、遊戯。ちょっと千年ロッド貸してくれない?」
「あ、あぁ。構わないが…何に使うんだ?」
「…未来が見たくてね」
「?…未来を見るなら千年タウクだぜ?まぁもうその力は無いけどな。ロッドの中に仕込み刀があるから気をつけろよ」

うん、知ってる。でも、このロッドじゃないと未来が見れないの。
部屋に戻り、ベッドに腰掛けロッドを見つめる。ねぇ、マリク。どうして貴方だけは千年アイテムに封印されていないの?もしも封印されていたら、今、私の身体をあげたのに。
歪む視界の中、冷たい錫杖を撫で上げる。様々な人を苦しめ、時には死に至らしめたこの錫杖。ゆっくりとその指を動かし、仕込み刀を握り締める。

「痛ッ…」

滴り落ちる血。貴方の大好きな血。全部あげるから、戻ってきてよ。ねぇ。何か言ってよ…。
握る力を強めたことにより肉がめり込む。水道の蛇口をひねったかのように流れ落ちる真っ赤な液体。貴方の経験した痛みはどのくらいのものなの?きっと、消えた時の痛みは、こんなもんじゃないよね。

「何処に行っちゃったの?マリク…」

掠れた声に、返事はない。
どうしても戻ってきてくれないのなら…。刀から手を離し、枝の部分を持つ。そして、

「っっ…!!」

左胸に刺さるロッド。次第に抜けていく力。不安定だった視界が、黒に安定する。貴方の過ごしていた闇もこんな風だったのかな。きっとここに居るんだ。今から会いに行くね。

グッバイ、大嫌いな光の世界。ハロー、大好きな闇の世界。貴方の 世界。

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