バイク


今日は海馬くんとバイクデート。いつもならリムジンの後ろに乗るか、海馬くん自らが車を運転するかなのだが、今回はお願いをしてバイクでデートすることにしたのだ。

「何もバイクでなくとも良かっただろう。車ならいくらでも出してやるのに」
「いいのいいの!バイクに乗ってデートするのって、ちょっと憧れだったからさ」

だけど…連れて行かれた車庫にあったバイクを見て驚いた。

「凄いバイクだね…。特注?」
「そうだ。我が社の社員に急ぎで作ってもらった」

そこにあったのは大きなウイングの付いた青色のバイク。フォルムはまさにブルーアイズ・ホワイトドラゴン。バイクのデートを提案したのが昨日だから、今日のデートに間に合うよう社員達が頑張って作ってくれたらしい。もっと早く言っておくべきだったとKCの社員に申し訳なく感じた。

「最初に出来たものはウイングが小さかったから大きなウイングを取り付けてもらったのだ。ブルーアイズの大きな羽がよく表現されているだろう」
「でも、こんなに羽が大きかったら不正改造になっちゃうんじゃ…」
「ふぅん。この俺に対して警察の力など無力!行くぞ名前」

そう言ってヘルメットをかぶった海馬くんを見たら、ヘルメットもブルーアイズをかたどっていた。勿論、私のヘルメットもブルーアイズ型だった。


童実野町を走っていると街の人の視線を一斉に感じたのは言うまでもない。子供は「すごいぞー」と目をキラキラさせているが大人は口をポカンとさせている。

「見ろ名前。みんなこのブルーアイズを羨ましそうに見ている。お前も恥ずかしがらず堂々として良いんだぞ」

それは少し、違うと思う。いや、少しではなくかなり違うと思う。ただ、子供を引きつけるところは流石社長と言うべきか。

海沿いに出て人も減り、恥ずかしさも無くなってきた。

「潮風が気持ち良いね〜」
「そうだな。バイクだと全身で風を感じることが出来る。後ろにいる名前の熱も感じられるしな…」
「ふふっ。海馬くんの背中って大きいよなぁ。私が包んでいるのに、なんだか包まれているみたいで落ち着く…」
「フン。後でちゃんと包んでやるから待っていろ」

…なんて幸せなひと時を過ごしていたが、それも束の間。後ろから警察の車が近付いてきた。

「え。ヤバいんじゃないのこれ…」
「この先で事故か事件でもあったのだろう。心配するな」

海馬くんの言う通り、警察の車は私たちを抜かしていった。ホッ、と一息ついたが、前を走る警察車両の中にある電光掲示板が光っている。そこには「パトカーについてきてください」との文字が。

「もう無理だ…。勝てない…」
「ふぅん。そんなに言うのなら、直接相手をしてやろうではないか!」

そうしてそのまま近くの広場に誘導された。

「この俺を誘導するとはいい度胸だ。俺が誰だか分かっているのか?」
「海馬コーポレーションの社長さんだよね。社長さんとは言え改造車に乗るのはアウトだねぇ」
「何?知ってて誘導するとは。なかなかのしたたかさだ」

私はそのやり取りを海馬くんの隣で見守る。

「とりあえず、この改造は違反だから15日以内に整備して運輸支局の方に持ってきてくれないかな?」
「ブルーアイズが違法なわけがなかろう!電気モーターを搭載したことにより排気ガスを出さないクリーンなオートバイなのだぞ!!」
「いや…排気ガスの問題じゃなくてこのフォルムが違反なわけで…」

その後も海馬くんはこのバイクの素晴らしさを訴え続けたが、警察が見逃してくれるはずもなく。せっかくのブルーアイズのバイクに不正改造のステッカーを貼られてしまった。


「この俺が警察ごときに屈することになるとは…情けない」
「い、いや、警察にはそうは勝てないよ!」
「クッ…。名前にも嫌な思いをさせてしまったな」
「いやいや、こんな経験海馬くんじゃないと出来ないからね(これは他の人には真似出来ないだろう)」
「すまない」
「謝らないでよ!もう良いからさ。それより…」
「ん?何だ?」
「私のこと、包んでくれるんでしょ?」
「ふん。まったく・・・」

そう言って抱き締めてくれる海馬くん。あぁ、落ち着く。
そして、この一連の流れを警察の前で堂々とする私たち。あのバイクに乗るのとどっちが恥ずかしいかしらね。


「決めた…。俺は、このバイクが走れるような街を世界中に作る。世界改造バイク走行計画だ」
「えっ!?」
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