独占欲


今日もマリクの周りには女の子がちらほら。色目を使って彼を誘惑しようとしている。

「それでね、ママが今度マリクも誘ってうちにおいでって」
「そうだなぁ…時間が合えば行ってやるぜぇ」
「ホント!?やった〜楽しみ!」

悔しい。私はマリクと何回も遊んでるし、お互いの家にだって行っている。私たちの方が仲が良いに決まってる。
でも私はマリクの彼女じゃないから遊ばないでなんて言えない。いつの間にか自分はこんなに嫉妬深くなっていたのか、いやだなぁ。

恋人に嫉妬する友人を見ていた時は、何でそれくらいで嫉妬するんだろう、重いなぁって思ってたのに、今となっては自分も同じ。
付き合っているわけでもないのに、ただ一方的に私が好きなだけなのに、他の女の子と仲良くしないでなんて思ってしまうのは私のエゴだ。
他の女の子と喋ってほしくないのなら、私がもっと頑張らなきゃいけない。他の子になんか目がいかないくらい…。


相変わらず向こうでは女の子のはしゃぐ声が聞こえる。マリクも一緒に笑ってる。
これ以上こんな様子を見せつけられたら私の気が持たない。他人の楽しむ様子がここまで怒りに変わるなんて思わなかった。

席を立ち廊下に出ると、すぐ後ろからマリクに声を掛けられた。

「おい、名前」
「なに」
「なんだよ怖いなぁ…あのよぉ、明日オレの家に来ないかぁ?」
「さっきの子たちとの約束はどうするのよ」

あ、つい言ってしまった。これじゃ盗み聞きしてましたって言ったようなものじゃない。つくづく馬鹿だなぁわたしは。

「聞いてたのかよ。まぁ、あれは適当に誤魔化しておくぜ…」
「ふーん…」
「で、明日大丈夫なのかぁ?」
「良いよ。マリクの家に行くわ」

彼の誘いは断れない。マリクと一緒に居られるのならそれだけで良い。たとえ彼にとって私が他の子と同価値であったとしても。悔しいけど、それほどまでにマリクのことを好きになってしまった。

「良かった。じゃあ…また明日な」

教室に戻っていくマリク。行かないで、ここで一緒に話そう、なんて言えない。賑やかな教室には暫く戻れそうにもない。


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