効果音を付けるとしたらぷにっ、だろうか。ぽよっ、だろうか。ぼて、だろうか。ジーンズからはみ出しているお腹が大変だらしない。

「私、ダイエットすることにしたの」
「奇遇だな名前、俺もダイエットすることにしたんだぜ！」

そう言う遊戯の顔は確かに前より丸くなっていた。もう一人の遊戯と比べるとぽっちゃり感がより目立つ。

「オレは食べても太らない体質だったのに、いきなり消化悪くなっちまった」
「毎日バーガーショップに通いつめた上、お菓子パーティーをしていればこうなるだろうなぁ…」

バクラとマリクも少しふくよかになっていた。体積の増えた彼らが集まったからか、心なしか机の周りに圧迫感があるような。

「主人格サマが買ってきたダイエットDVDがあるんだが、一緒にやるかぁ？」
「ホントに？やるやる！」
「ふーん、やってやろうじゃねぇか」
「俺もやるぜ！」

マリクの提案に全員が頷く。頷く時にみんな二重顎になっていた。私もそうなのだろうか、顎についた肉をつまむ。

「じゃあバーガーショップに行ってからー…」
「バクラ、ダイエットするんだろ？」
「チッ…仕方ねぇ。今日は我慢してやる」


こうして私たちはダイエットに励むこととなった。
放課後になっても食べ物が食べられないことにもどかしさを感じつつ、マリクの家にお邪魔する。

「ちょっとトイレ借りていいかな？」
「いいぜぇ名前。ちゃんと返せよぉ」

何を返せばいいのかよく分からないけれど、後でうちのトイレを貸せばいいだろう。まさか便器そのものを新品で返さなきゃいけないわけではないだろうな…。

トイレから戻ると、テレビに映るガタイの良い黒人がエクササイズの説明をしていた。

「これ、何ていうDVDなの？」
「ブリーズ・ビートキャンプ」
「どこかで聞いたような名前だな…」

バクラの指摘通りどこかで聞いたことがあるような気がするけど…オマージュか何かなのだろうか。

「ジャパネットはだかで買ったDVDなんだからちゃんとしたモンだぜぇ」
「なんだよはだかって！変なDVDじゃねぇだろうな」
「変なDVDとは失礼だなぁ。コイツはリシドの兄上サマなんだからよぉ」

リシドにお兄さんなんて居たのか。今初めて知った。確かにリシドもガタイがいいけど、お兄さんはかなりムキムキなんだなぁ。と言うかお兄さんが出演しているなら、わざわざ通販で買わなくてもよかったんじゃ。

「ま、嘘だけどなぁ…」
「はぁ！？嘘かよ！！」
「本当かと思ったじゃない！」
「えっ、何が嘘なんだ？」

この流れで理解出来ていない遊戯はさて置き、私たちもエクササイズに取りかかることにした。
しかし、身体が思うようについていかず少し動いただけですぐに疲れてしまう。

「オイ…これ結構しんどくねぇか…」
「もう弱音を吐くのか、バクラ…オレはまだまだ、いけるぜ！」
「んだと！？ならどっちが先にくたばるか…勝負しようじゃ…ねぇか！」
「望むところだぜ…！」

そんな中、遊戯とバクラがエクササイズ勝負で燃え始めた。
一方のマリクは涼しい顔をして難なくエクササイズをこなしている。この男、できる。

「マリクは疲れないの？」
「まぁ毎日やってるからなぁ」
「えっ、毎日！？すごいじゃない！」

あれ、でも何で毎日やってるのに私たちと体型が変わらないんだろう。まだ始めたばかりだからかな…。

その後、ヘトヘトになりながらもなんとかエクササイズに取り組み、一旦休憩を取ることにした。

「疲れた…もう…動きたくねぇ…」
「誰か水をくれ…」
「…」

私は疲れのあまり言葉も出なかったが、マリクはぐったりすることもなくスッと部屋を出ていった。

「マリクの野郎、なんであんなすました顔してんだよ」
「エジプトの奴は体力があるんじゃないか…あ、俺もエジプト人だった」
「毎日やってるみたいだから、これくらいは平気なんじゃないの…あ〜疲れた」


しばらくすると、飲み物とお菓子を抱えたマリクが部屋に戻ってきた。

「ほらよぉ。運動の後はおやつタイムだ。好きなだけ食いな」
「いいのかマリク！？じゃぁオレ様はコーラを…」
「俺はコンソメポテチを貰うぜ！」
「私はチョコレートを…ってちょっと！これじゃ運動した意味がないじゃない！」

運動がパァになるどころかもっと太りそうなくらい高カロリーなものが並ぶテーブル。しかし既におやつモードに入っている3人は聞く耳を持たない。

「我慢することなんてねぇよ。名前も食べろ」
「これだけ運動したんだからちょっとくらい大丈夫だろ！」
「いつものようにお菓子パーティーしようぜぇ、名前」

テーブルの上にドッサリと置かれたお菓子が私を誘惑する。みんなが美味しそうに食べている。あぁ、食べたい。


「で、でも…」
「名前、正直になれよ」
「…そうだよね。運動したから大丈夫だよね。食べる食べる！」
「そうこなくちゃなぁ」
「コーラついでやるぜ！」
「じゃぁ…エクササイズお疲れ様でした！乾杯！」


ダイエットは、明日からやろう。