甘いケーキの作り方


※頂き物です



「お邪魔しまーす」
「あれー名前ちゃん!どうしたの?」
「ナム君こんにちは!今日はマリクに呼ばれて…ちょっとね…」

私は今日、付き合って一年目の彼氏…マリクに家に来るよう言われてやってきた。


**甘いケーキの作り方

「今朝、ポストにこれが入っててね」

私はマリクと共に住んでいるナム君に、マリクが書いたと思われる手紙を見せた。


−小たいじょう。

だいすきな名前へ。
きょうのいちじに、いえにきてください。
待って升。

まりく


「はは…アイツ相変わらず字が汚いな…しかも漢字間違ってるし…」

私はリビングでナム君に手紙を見せた。
ナム君は苦笑いで手紙を見つめる。

「…まぁマリクらしいよね」

私も苦笑いで手紙を見つめる。

「そう言えばマリクは?」
「朝から台所に籠もって出てこないんだ…何やってんだか…」

ナム君が台所に視線を送る。
台所からは鼻歌が聞こえてきた。


「あっ名前ちゃん。お昼は食べた?」
「ううん。まだ食べてない」
「良かったらこれ食べない?余り物だけど…僕が昨日作ったパエリア」
「わぁ!食べたい!余り物でも構わないよ〜ナム君の料理めちゃくちゃ美味しいからね」

私は彼からパエリアの皿を受け取る。
ナム君が作る料理はとにかく美味しい。和食でも!洋食でも!中華でも!
おまけに、パティシエ顔負けのケーキも作れる。
花嫁修行中の私の中で、最も尊敬する人物だ。
毎日ナム君の料理を食べられるマリクが羨ましいとさえ感じてしまう。
実はマリクに内緒で、ナム君に料理を教えてもらっていたりする。
マリクと結婚したら…毎日美味しいものを食べさせてあげたいから。
私はそんな将来ににやけながら、パエリアを頬張った。

「名前〜来てくれたのか!」

パエリアを食べ終わる頃…マリクが台所から顔をだす。
私を見るなり、眩しい笑顔を見せる彼。
この笑顔がたまらない。

「来たよマリク!台所で何してたの?」

すると彼は、待ってましたと言わんばかりに台所からケーキを持ってくる。

「わぁ!スゴーイ!」
「これ全部名前が食べていいぜ!」

そのケーキの真ん中には、"まりく&名前いちねんきねんび"と…歪なチョコ文字で書かれていた。

「ねぇ食べて良い!?」

私は、フォークでケーキをすくう。パクリと一口食べた。

「…う」

私の咥内に広がる…強烈な塩味。塩の塊を食べたような…そんな塩辛さだ。
私は思わず口を抑える。
そんな私を見てナム君もケーキを一口…

「っうぇ!…マリク塩と砂糖間違ってるし!」
「え…」

マリクの顔が引きつった。

「…マリク…塩と砂糖間違うなんて…」
「そうだよ!料理上手のナム君を見習いな?」

冗談のつもりだった。
冗談のつもりで言った言葉だった。

「…っうわぁあ!主人格しゃまも…名前も…だいっきらいだぁあ!」

マリクが泣きながら家を飛び出してしまったのだ。

「あっ!マリク…』」


それから…
私はマリクを追いかけて、公園のブランコでうなだれる彼を発見する。

「…マリク。見つけた」

私が声をかけると、マリクは涙をゴシゴシ拭ってそっぽを向いた。

「…ごめんね…マリク」

私はそう言って彼の隣のブランコに腰掛ける。

「マリク…」
「っ…俺知ってるんだぜ?俺に内緒で名前が主人格しゃまに…会ってるの」

マリクは私の顔を見ずに話を続ける。

「…名前はっ…本当は主人格しゃまが好きなんだろ?料理も上手いし…なんでも出来るし…何で俺なんか…」

私はそんなマリクにため息をつく。そして口を開いた。

「ナム君にはね…料理教えてもらってるの。何でか教えてあげようか?結婚したら…マリクに毎日美味しいもの食べさせてあげたいからだよ?」

マリクがふっと顔を向ける。
泣きはらして真っ赤に貼れた潤んだ目が…私を見つめた。

「私は…マリクが好きなの!ナム君じゃない…マリクが…」
「名前…」

マリクはまた泣きそうな顔をして、私に抱きついた。
私は彼の背に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。

「さっきは…ごめんね?せっかくケーキ作ってくれたのに…」
「…キスしてくれたら許す」

彼はそう言って私を見つめた。
「…いいよっ…」

私はそんな彼の唇に軽いキスをする。

「…もう一回…」

彼がイタズラな笑顔でそんな事言うもんだから…今度は深く彼に口づけた。
ケーキなんかより甘い甘い…口づけ。


「今度一緒にケーキ作ろっか?」
「おぅ!今度は間違えないぜ!」

そんな会話をしながら…私達は手をつないで帰路につく。
私達が…甘い甘いケーキを作れたのかは、また別のお話。
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