メイドイン


※海馬邸メイド



「瀬人様がお帰りになったぞー!であえであえー!」
「人を曲者みたいに言うな!」

帰ってきて早々ツッコミをする羽目になった海馬。別荘専用の使用人が大変やかましく、関わる度にこうしてツッコんでいた。
いや、別にツッコミを強要されているわけではないのだが、彼女の言動は無視出来るボケの範囲を飛び越えていると言うか何と言うか。

「ご飯にします?ディナーにします?それともお食事にします?」
「全部一緒ではないか!俺は風呂に入る」
「申し訳ありません。まだお風呂の準備が出来ていないのです」
「なら夕食にする」
「食事も出来ていないのです」
「食事をあれだけ強調しておいて出来ていないのか。意味が分からん」

今日は予定より早く帰宅したため準備が出来ていないのは多目に見てやろう。この別荘に来てから心が広くなった気がするな。

「それなら準備が出来るまで部屋に居る」
「瀬人様が部屋に戻るそうだー!皆のもの戻れ戻れー!」
「いちいち大声で言わんでいい!」


部屋に入りソファーに腰を下ろす。室内は綺麗に掃除されており使用人がきちんと働いていることが伺える。
ふとテーブルの上に積み重なっている本が目に入った。本の表紙には水着姿の女性が写っている。こんな雑誌は身に覚えがない。本当だ。

「あっ、瀬人様!それは先程部屋の掃除をしていた際にベッドの下から出てきたものでして…」
「これは俺のではない。こんな悪趣味な雑誌など知らぬ。と言うかいつからそこに居たのだ。ノックくらいするのが常識と言うものだろう」
「ノックしましたよ。朝方」
「今は夕方だぞ。まさか部屋の中と外で時差があるわけではなかろう」
「えぇありませんよ。何言ってるんですか」
「おのれぇ…」

それにしてもこの雑誌は何処からやってきたのだ。持っていても仕方がないため名前に処分するように頼む。


「止めろ!それは城之内くんから借りパクしたやつだぜ!」
「遊戯!?何故ここに居る!?」
「瀬人様が出掛けた後に来てくださったんですよ。御存知ないのですか?」
「聞いていない。いつ言ったのだ?ただし朝方とは言うな」
「まず瀬人様に言ってません」

それなら知る筈が無いだろう。そもそも勝手に家に上げるとはどういうことだ。
凡骨の物だからどうでもいいが借りパクしたものを人の家に置いていくのも迷惑極まりない。

「ベッドの下にウフフな雑誌を置いておけば海馬も健全な男子に見られるだろうと思ったんだぜ」
「余計なお世話だ。名前、何故俺の許可無く遊戯を家に入れた」
「瀬人様の心の友とお聞きしたもので。それに遊戯様と私は幼なじみなのです」
「幼なじみなら誰でも入れるのか!今回はまだ遊戯だから良かったものの…いや良くない。普通は主の許可を得てから家に入れるものだろ。だいたい…」

遊戯とは言え許可無く家に入れたことは流石にマズかったらしく、海馬の説教が始まる。今回ばかりは名前も反省し頭を垂れる。


「使用人の分際で勝手に行動し御迷惑をお掛けしてしまい、大変申し訳御座いません」
「以後気を付けるのだな」
「ですが瀬人様、遊戯様と私は幼なじみではありません」
「何!?」
「口からおまかせです」
「名前さん、それを言うなら口からでまかせだぜ!」

名前と遊戯が笑い合っている。何だこの疎外感は。

「それに遊戯様は瀬人様とのデュエルに呼ばれてこの別荘に参られたのですよ」
「そうだぜ!海馬、俺との約束を忘れたのか?」
「なっ、それは…すまない」

何故最終的に俺が謝らなければならないのだ。俺が悪いのか?俺が悪いんだ。

しかし遊戯は夜だからと言ってデュエルをせずに帰宅した。アイツはただいかがわしい雑誌を置きに来ただけだった。
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