変な夢


昼休みが終わり、誰もが微睡みに包まれる。その中ですっかり包まれてしまった人物が一人。

「き、きびだんご選手権!」

ガバッと身を起こす。夢から覚めて顔を上げると皆がこちらを見て笑っている。今は授業中。あまりの恥ずかしさにまた机に突っ伏した。
案の定、帰り道は私の寝言の話で盛り上がる。

「何だよきびだんご選手権って!!俺が聞いた中で一番面白ぇ寝言だぜ!!」
「うるさい!もうあのことは忘れてよ」
「海馬にも馬鹿にされてたじゃねぇか」

城之内の言う通り、授業終わりに海馬に馬鹿にされて笑われたのは事実。

「僕も授業中にビクッてなって起きたことがあるから気持ちは分かるよ」
「遊戯くんはバクラと違って優しいね〜」
「オレなんか机に突っ伏して寝てたら主人格サマに背中からビー玉入れられたんだぜぇ…」
「それ冬場に氷でやられたことあるぜ!」

家で相棒にな!と言った遊戯の顔は何故か誇らしげだった。

「ま、今日は良いきびだんごの夢が見られるといいな」
「フン!バクラが悪夢を見ることを祈りながら寝るわ!」


家に到着し一同と別れる。
何故きびだんご選手権と言ったのかは分からない。きびだんごなんて桃太郎に出てくることくらいしか知らないのに。そもそもきびだんごって……いやいや、こんなに考えていたらバクラの言う通り本当にきびだんごの夢を見てしまう。もう忘れよう。
明日が提出期限の課題に手を伸ばし、寝る頃にはきびだんごのことなどすっかり忘れていた。

…ん…何だろう…この緑色の物体は…何で私、踊ってるんだろう……

「うわあぁっ、ずんだもちディスコ!!」

夢から覚める。時計を見ると目覚ましが鳴る1分前だった。今、ずんだもちなんとかって言ったような気がするんだけど…どれだけ和菓子好きなんだよ私は。ま、誰にも聞かれなくて良かったか。


「おはよー!」
「おはよう名前」
「名前!俺の顔は大丈夫か!?」

学校に着き遊戯たちのところに向かうと、バクラが勢いよく肩を掴んできた。

「えっ、どうしたの!?」
「何だか変な夢を見たらしいよ」

獏良くんが間に入りバクラを落ち着かせる。

「変な夢?」
「あ、あぁ。実はな…」


・・・試験日にも関わらず、オレは一時間以上寝坊してしまった。慌てて準備をするものの走ることが出来ない。モタモタしながらメシを食うためにダイニングに向かう。
朝食はトーストだった。だが、食べようと思っても何故だか食えねえ。口元まで運ぶと手が動かなくなっちまう。飲み物に手を伸ばしても同じだから、諦めて身支度をすることにした。
洗面台で顔を洗ったら、その途端急に眩暈がして身体に力が入らなくなった。とりあえず宿主に助けを呼んだ。そしたら宿主が顔色を変えて、急いで新しい顔の準備をしなきゃってどこかに走っていっちまった。新しい顔って何だよって思って自分の顔を鏡で見てみたら・・・

「アンパン○ンになってたんだよおおお!!!」
「ブフッ!!!何だそれ!!!」
「昨日私のこと散々馬鹿にしたからこうなるのよ。ぷぷぷ」
「顔が濡れて力が出なくなったんだな」

マリクくんが冷静に分析をする。トーストが食べられなかったのもア○パンマンだったからなのか。

「夢はそこで覚めたが、今も顔がパンなんじゃないかと思うと…」
「朝からずっと『オレ様の顔は大丈夫か!?普通か!?』って質問してきてさぁ。そもそも夢の中の僕のポジションは何?」

あのおじさんかあの女の人だろうねと遊戯くんが笑う。もう一人の遊戯は笑いすぎてヒーヒー言っている。
そんな私たちを鬱陶しそうに見ながら海馬が登校してきた。

「あ、カイバイキンマン!おはよう」
「名前、俺は菌ではない。おはよう」
「挨拶は返すんだな」

城之内の的確なツッコミに遊戯がまた吹き出す。

「ま、今日は顔を濡らさないよう気を付けて生活することね」
「学校じゃ新しい顔は用意出来ないぜ」
「あんぱん買ってきてよ」
「うるせぇよ!あと宿主はオレをパシろうとしてるだろ」

その後しばらくの間、バクラはあんぱんに異様に反応するようになった。
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