※下品。夢主がマンションで一人暮らし設定。
朝というのは、爽やかでありたいものだ。
「あっ…もうイク…!」
爽やかでありたいものだ。
「やぁっ!イっちゃう!!」
爽やかでありたいものだと言っているのに…!
「…ってわけなんだよ。もう朝から気分の悪いこと山の如し」
「へぇ〜。名前の隣の住人は朝早くからお盛んなんだな」
教室に着くなり、遊戯たちに愚痴をこぼす。
それは今日の朝、ベランダでの出来事。溜まっていた洗濯物を片付けるのに、いつもより早い時間に起きてせっせと衣類を干していると、右方向から如何わしい声が聞こえてきた。女の人の声。喘ぎ声。それはどう考えてもアレで、アレだ。
「部屋に居る時は聞こえなかったんだけど…何かもう帰りたくない」
「面白ぇじゃねーか。次に隣の住人に会ったら『いやぁ、この前は激しかったですね』って言ってやれよ」
「言えるわけないでしょ!」
隣の住人が女の人であるということは知っているが、会う機会なんて殆ど無いし顔も知らない。喘ぎ声は知っている。
ただでさえ眠くてテンションが上がらないのに、朝から人の情事の声を聞いたらテンションが下がるどころの問題ではない。ヤるのは勝手だけど周りの迷惑になることは控えてほしい。
「ならよぉ、オレたちで何か対策を考えてやろうぜぇ」
「そうだな。もしも次にあはんうふん聞こえてきたらこうすれば良いってのを考えるか!」
何やら案を考えてくれる遊戯とマリク。朝からこんなお下劣な話に付き合わせてしまって申し訳ないが、話さずにはいられなかった。
「隣の奴に面と向かって言うのが嫌なら、紙に書いてドアポストに入れれば良いんじゃないか?」
「え、なんて?」
「『先日の朝は激しかったですね。by.お隣さん』って…」
「それバクラのと変わらないじゃない!」
しかもお隣さんって書いたら私が書いたってほぼバレる。
「じゃあその紙を隣のヤツの玄関に貼っておけばいいんじゃねーの?いい見せものになるぜ?」
「そこまでしたら私の方が悪い人になっちゃうわよ!確かに喘ぎ声は収まるかもしれないけど…」
「んだよ折角考えてやったのによぉ。なら名前はどんなやつが良いんだ?」
バクラに指摘されるが、どんなやつと言われるとそれはそれで分からない。ただ隣の人と直接関わることはあまりしたくないし、初めての会話がアレについてなんて凄く印象が悪いだろう。
「直接関わらない感じので…」
「ならこっちも喘ぎ声で対抗するとかどうだ?」
「目には目を、喘ぎには喘ぎをってかぁ…」
「そんな言葉初めて聞いたわ。それに相手だって…」
「相手?んなもんいらねぇよ。名前一人で喘ぐんだよ」
その言葉に耳を疑う。一人で喘ぐ…?
「ベランダに出て、隣に聞こえるように一人で喘げば良いんだよ。そうすりゃ隣もビックリして止めるだろ」
「いや…それって結局私が一番迷惑な人だよね。ベランダに出て喘いでたら隣どころか広範囲に聞こえちゃうし」
あまりにも大胆すぎる意見ばかりが出てくるため、バクラの案は却下した。
「一人で喘ぐのが嫌なら、海馬みたいに一人でワーッハッハとか言ってれば良いと思うぜ!隣の奴は海馬が居るのかと思って驚くに違いない」
「違いない、じゃないよ!結局一人で声出さなきゃいけないの?しかも海馬と私の声はだいぶ違うよ?」
「そこでブルーアイズあんあんって言えばさらに効果的だなぁ…」
マリクがとんでもないことを言い出してきたが、当然そんなことはしたくないので却下。これを実行したら確実に変な人だと思われる。隣の喘ぎ声よりタチが悪い。
「私から何かをするというか、自分で気付いて欲しいんだよね。喘ぎが外に聞こえてるって」
「でも気付いてないから今に至ってるんだろ?」
「案外聞かせてるのかもしれないぜ?」
「バクラの言うとおりならとんだお隣さんを持っちまったなぁ…名前」
そんなことを言われると隣の印象が余計に悪くなる。まだ会ったこともないのに。
「あぁ、ならお経でもかけておけばいいんじゃねぇのかぁ?」
「え…お経?」
「喘ぎ声が聞こえてきたら大音量でお経をかけ始めればいい。萎えるぜぇ」
「んー…今までの案の中では一番やれそうだけど、確実に怪しいよね。それにお経のCDなんて持ってないし」
「自分で唱えればいいんじゃねぇの?あぁ、でも宗教関係は止めといたほうがいいかもな」
「信じられるのは自分だけだぜ、名前」
何だか上手いこと遊戯にまとめられてしまった。結局いい対策は出なかったけど、私もそこまで深く考えていなかったから別に構わない。これから先も喘ぎ声が頻繁に聞こえてくるようになったら、何かしら対策を取らなきゃいけないけれど。
目に見えるものだけがご近所付き合いじゃないということは、よく理解した。自分も気を付けよう。