キャンプ2


「キャンプ1」の続き



真上にあった太陽が徐々に傾き始める。

「陽が暮れないうちにテント張ったり夕飯の支度をした方がいいんじゃない?」

しばらく休んでいると遊戯くんが提案を出してきた。それに賛同し、海馬が準備を始める。そこに出されたのは折り畳んであるテント。

「これはな、ロッジドーム型テントと言って「テントどこに張るよ〜」一般的なドーム型のテント「俺がこの場所にしようとしたんだからな!」よりも大きい……聞けぇっ!」

海馬のタメになる説明を無視し、遊戯たちはテントの設置場所を探す。

「そもそも一人一つのテントではないわ!よく見てみろ!」

海馬に言われて数を数えてみると、テントは五つしかない。

「このテントは一つで五人を収容出来るが、広々と使いたいのであれば二人で一つのテントを使用するがいい。ただし、俺はキャンピングカーで寝るがな」

ここに来てまさかの海馬テント離脱を知らされ、皆反論をする。

「社長さんはテントなんかで寝ないってかぁ?」
「なんだよ海馬。せっかくのキャンプなんだからテントで寝ようぜ!」
「そうだよ!海馬くんも一緒にテントで寝ようよ!」

名前も一緒に説得すると、海馬がよからぬことを考え始める。

「名前と一緒に寝る…?そんなことになったら俺のズボンのテントが張…ぐふっ!」
「さ、海馬くんのことは置いといてテントのメンバーと場所を決めようか」

海馬の腹部に一撃を喰らわした獏良がにこやかに笑い、倒れた海馬を無視してメンバー決めを行う。メンバーはすんなり決まり、杏子と名前ペア、W遊戯ペア、Wバクラペア、Wマリクペア、寝相の悪い城之内は一人でテントを使うことになった。

「寂しくなったらいつでも来いよ城之内くん!」
「あまりの寝相の悪さにテントごと動いてくるかもしれねぇぜ」
「起きたら城之内のテントだけ河原じゃないところに行ってるかもしれないな」
「うっせえ!マリクらも互いを蹴ったりのしかかったりしないように気を付けるんだな!ったく、遊戯の優しさを見習えよ!」

その後、各々がテントを張る場所を決め設置に取り掛かる。KC開発のテントだけあって、難しいと言われるテント張りもすぐに終えることが出来た。


「次は夕飯の準備だね」
「もう海馬が準備してるみたいだよ」

ほら、とマリクくんの視線の先を見ると、海馬が鍋や米を用意しているのが見える。

「よぉ、社長。無事だったんだな」
「フン。まぁお前が獏良を怖がる理由が何となく分かった。夕飯は貴様らの要望通りカレーにするぞ」

キャンプの計画を立てる際、お昼はバーベキューで夜はカレーだとみんなで決めていた。城之内が「おでんにしねぇか?」と海馬を皮肉ったが、夏におでんという提案は全員に却下された。
役割分担を決め、遊戯二人とバクラ二人はご飯担当、マリク二人と海馬はテーブルやイスの設置担当、城之内と杏子と名前はカレー作り担当となる。
テーブルの設置は難なく終わり、カレーライスが大好物な城之内と女子二人が居るカレー作りもスムーズに進む。心配なのはご飯担当のグループ。


「相棒、これはどうやってご飯を炊くんだ?」
「海馬くんがマニュアル持ってきてくれたから、それ読めば分かるよ」

「家にある炊飯器とはえらい違いじゃねぇか。こんなんで本当に出来るのか?」
「キャンプでは定番だよ。これは電気じゃなくて火でご飯を炊くからね」

色々あるんだな〜と感心しながら米と水を入れる。水を入れた後に15分ほど置かなければならなかったり、火の調節をしなければならなかったり、炊き終わった後も暫く置いて蒸さなければならなかったりと、炊飯器とは違い何かと手間がかかる。
だが、蓋を開けて真っ白に輝くご飯を見ると4人の目もキラキラと輝いた。

「うわ〜いい匂い!」
「もうお腹空いたよぉ」
「オレ様も腹減った〜」

目の前にある食べ物にありつけないもどかしさを感じながらも、その香りで幸せな気分に浸る。

「遊戯〜。カレーはもう完成したよ〜」
「名前!こっちも出来たぜ!」

そこにあるご飯の予想外の出来に、他のメンバーも驚きを隠せない。

「俺はご飯無しでもカレーを食べる覚悟を決めていたんだがねぇ」
「まさか君たちがきちんと調理出来るなんて思わなかったよ」
「失礼だなマリク!オレ様の作ったご飯が食べられるなんてありがたく思えよ!」


準備が整ったことを確認し、海馬が人数分の皿を遊戯に渡す。

「何だ海馬?」
「何だじゃない。ご飯を盛りつけてからルーを入れるんだろ」
「大柴?」
「違う!こんなところでボケている場合か!配分は貴様に任せたからな」

遊戯は持ち場に戻り、ご飯の入った鍋の蓋を開ける。

「よそう前に、ご飯はよく混ぜた方がいいよ」
「混ぜる…?あぁ、分かったぜ相棒!」

“ご飯クラッシャー!!!”

そう言いながら、ご飯をざくざく混ぜていく。

「おいおいおいおい何やってんだよ!」
「ゴッドハンドクラッシャーの略だぜ!ゴハンクラッシャー!!」
「そんなに混ぜなくていいよ!本当にクラッシュされちゃうよぉ!」
「そ、そうなのか。じゃあこのへんにしておこう」

お皿にご飯をよそい、カレーグループへ渡す。そしてテーブルに持って行き、待ちに待った夕食の時間。陽はすっかり暮れており、いくつか置いてあるランタンがテーブルを明るく照らしている。


「じゃあ、食事前の挨拶は名前がよろしく!」
「えっ、うーんと…みんなお疲れ様でした。いただきまーす!」
「「普通だなオイ!」」

みんなに突っ込まれてしまったが、笑いながらそれぞれがカレーを口に運ぶ。

「旨い!」
「美味しい〜」
「KC農業もそろそろ本格的に活動をするか…」

海馬コーポレーションの野菜と米を使ったため一人だけ仕事のことを考えているが、皆自分で作ったということもあり美味しさを感じている。


食事をしながら他愛も無い話をし、気付けば時刻は21時。

片付けを済ませ、一人ずつお風呂に入ることになった。杏子が、私が男子たちを監視してるから安心して入ってきなさい!と言ってくれたから、覗きに関しては心配ないだろう。
バスルームに入りシャワーに手をかけると、シャワーヘッドが銀色のブルーアイズであることに気が付く。

「海馬くんが言ってたのってこれだったのね」

バスタブがブルーアイズなのかと思っていたが、流石にそれはログ調に似合わないから止めたのだろうか。

一日中はしゃぎすぎたため、お風呂から上がった後はすっかり眠くなってしまった。それは私だけでなく、みんなも眠そうにしている。

「本当は夜更かししたかったが、こりゃ眠くてしかたねぇや。オレ様はもう寝るぜ」
「僕も、もう一人の僕がお風呂から帰ってきたら寝るよ」
「じゃあみんなまた明日ね」

おやすみ〜と言い、それぞれのテントに入っていく。川のせせらぎと虫の鳴き声が心地良く響き、皆すぐに眠りに就いた。


次の日。若干寝惚け眼で朝食を取り、テントなどの片付けを済ませる。

「城之内がテントごと行方不明にならなくてよかったな」
「俺は密かにテントが移動しているのを期待してたんだがなぁ」
「何の期待してんだよ!そもそもテントは固定してあるんだからそうは移動しねぇだろ!(まぁテントの中ではだいぶ移動してたけど…)」
「疲れたけど楽しかったね〜」
「そうね!たまには郊外に出るもの良いわね」
「オレ様も楽しかったぜ!なぁ、宿主」
「うん!またみんなで来たいな〜」
「その時はこの場所を貸してやるから連絡するがいい」

海馬の優しい言葉に少し驚く一行だが、本人からそう言ってくれるのであればとても有り難い。

「海馬、お風呂場にあったブルーアイズ、あれシルバーだよな?」
「あぁ、そうだが…まさかシルバーでお前のモンスターのシャワーヘッドを作れとでも?」
「その通りだぜ!よく分かったな!」
「シャワーヘッドだけ持っててどうするの!家にシルバーいっぱいあるでしょ!」

まるで保護者みたいな言い方をする遊戯くん。あながち間違ってはいないけれど。一方の海馬は、それを商品化するのも面白いな…と考えていた。

やたらと慌ただしいキャンプではあったものの、それらも良い思い出。ここなら子供たちも楽しく過ごせるだろうなと思いつつ、川辺を後にした。
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