どっかん


一通りの買い物を済ませ、帰路につく。

帰ったら、録画した『日本の車窓から』を見なければ。最近忙しくて一週間分も溜めてしまった。


「…ガハハハ!!」

玄関に手を伸ばすと、何やら馬鹿でかい笑い声が聞こえてきた。あれ…?今日は誰も家にあげていないと思うのだが…もしや、泥棒!?
既に鍵の開いているドアを静かに開け、様子を見る。とその瞬間、

「「ぐるぐるぐるぐるどっか〜ん!!!」」

えぇっ!?まっ、まずい。家を爆発させるつもりだ!!!
慌てて声のする方へ行くと、そこに居たのはテレビの前で踊る遊戯とバクラとマリク。

「おい、バクラ。無表情で踊るな!怖いだろ!」
「マリクの気味悪い笑顔よりマシだろうが。これじゃ子供が泣くぞ」
「失礼だなぁ。泣く子も黙るマリクちゃんだぜぇ」

何だこのビジョンは…。この3人が一緒に踊っているだと…。
名前に気付いた3人は、踊りながら声を掛ける。

「おぅ。おかえり名前。」
「お前も一緒に踊るかぁ?」
「むしろオレ様の代わりに踊ってくれてもいいんだぜ…?」

ノリノリな二人に比べ、バクラだけ苦笑い状態なのはさて置き…。

「なんでうちに居るのよ!」
「3人とも家に主人格サマが居るから、踊るのに恥ずかしくてねぇ」
「名前の家が留守だったから、バクラにピッキングしてもらったんだぜ」
「オレ様の得意分野だからな。盗みはしていないから安心しな」

ピッキングされた時点で安心出来ないわよ!と言うか、うちに居る理由が明らかにおかしい。

「それに…爆破するってどういうことなの!」
「爆破?何の話だよ」
「だって、ぐるぐるどっかんって…」

3人は顔を見合わせ爆笑し始めた。

「名前、それは違うぜ〜」
「これは『いないいないなんとか』の歌だぜぇ」
「そこまで言うなら『ばぁ』まで言えよ!」

バクラの鋭いツッコミはさて置き…。

「え…?なんで幼児向け番組の踊りを?」
「俺達、カード買いすぎて金欠になっちまってよぉ。海馬ランドでバイトをすることになったんだ」
「そこで小さい子供の相手をしなきゃいけないから、今こうして踊ってるんだぜ」
「オレ様はやりたくないのにやらされてるんだがな」

嫌々ながらのバクラはさて置き…。と思っていたが、遊戯がすかさず渇を入れる。

「バクラ、もっとやる気出せよ!一緒に踊るから名前のポテチを食べたことを言わないでくれ、って頼んだのはお前だろ!」
「えっ!!あのポテチ食べたの!?」
「オレは1袋しか食べなかったのにコイツは2袋も食べたからなぁ」
「何余計なこと言ってんだよ!!」

いくらなんでも食べ過ぎでしょ。と言うかマリクも食べたんだ…。あぁ…日本の車窓からを見ながら食べようと思っていたのに…。

「わ、悪かった…。コイツら、ピッキングさせるためだけにオレ様を呼びやがって、おまけに勝手にバイト登録されちまったから腹が減っちまったって言うか…」
「その理由でこの結論には行き着かないわよね。あと、しいて言えば“腹が立つ”でしょ」

まぁ、さっきの買い物でまたポテチ5袋入りを買ったからいいや…。


「で…。もう番組終わったからいいでしょ」
「フフン。オレ達が一回切りの練習で終わらせると思ったか?」

そう言ってリモコンを押すと、また『ぐるぐるどっか〜ん』が始まった。

「どうだ名前!これが録画機能というものだ!!!名前の家のテレビに録画機能が付いていてよかったぜ」

どや顔で話す遊戯。いや、録画機能くらい知ってるから。と言うか、録画…?…嫌な予感しかしない。
遊戯からリモコンを奪って録画リストを見てみると…

「あぁぁぁー!!!日本の車窓からが消えてるぅぅぅー!!!!」

上書き録画された…。数話は上書きされずに済んだものの、毎回欠かさず見ている私にとってはもう…。

「どうしたんだぁ名前?ただならぬ殺気を感じるぜぇ…?」

名前の様子が変わったことに気が付いたマリクは、静かに後ずさりをする。

「…やっぱり爆発するみたいね」
「え…?いや…ぐるぐるどっかんは…歌…であって…」

焦る遊戯と、最早声も出ないバクラ。
直後、名前の怒りが爆発し、3人はその爆発の餌食となった。


「もしもし海馬くん?なんか、遊戯たち爆発したみたいだからバイト出来ないって」
「お前、何を言っているんだ?」
「ぐるぐるどっか〜んだよ。知らないの?あれ楽しいよね」
「あ、あぁ…。(電話越しだが、名前からただならぬ殺気を感じる…)ま、まぁ人は足りているから大丈夫だ。ただ、いきなりキャンセルをする行為は本来であれば許されないと、遊戯たちに伝えておいてくれ」

伝えられればね、と確信のない返事をし電話を切る。
消されてしまった『日本の車窓から』は、公式サイトで動画を買って見よう。ネット配信していて良かった。

怒りの業火を喰らった3人はそれぞれの主人格に引き取りにきてもらい、名前はポテチを食べながら『日本の車窓から』を見て、至福のひとときを過ごした。
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