弱点


ぴくり、と。足の指が引きつるのが分かった。

耳の先をなぶられる、胸の頂を引っ張られる。まだどちらの服も脱いでいないのに、私の下半身は熱く昂ぶりジーンズを押し上げていた。

早く早く早く。浅ましい感情が脳髄から爪先まで支配する。
こんなのは、駄目なのに。

子を残さない営み。天使と人間。

禁忌でしか無い行為を、誰が許すと言うのか。

「ルシフェル…。」

熱い息が首筋にかかったかと思うと、今度はそちらを舐められた。大きな背中にしがみつく事しか出来ない私と反対に、イーノックは次々と私の身体を暴き溶かしていく。ボタンの外れたシャツも、ジッパーの下りたジーンズも、熱を冷ましてはくれない。

「あ…あ…。」

性器を擦られると、我慢出来ずに泣くような声が漏れた。それと同時に、もっととねだるように緩く腰を揺らす。

「敏感なんだな。」

嬉しそうに言うイーノックは指を動かす速度を早め、額に軽く口付けてくれた。離れていくそれを逃がさないように、舌を出して唇を舐めると、そのまま彼の舌が応えてくれる。

敏感だ何だとお前は言うが、口付けをされてこんな風になってしまうのはお前だけだ。私が今までどれだけの人数に祝福の口付けを送ってきたと思っているんだ。


…お前、だけだ。