「ディアブロってあんまり食事しないよな。」
紅茶を飲んでる所は何回か見た事があるし、ギィなんかケーキのレシピ欲しさにあれだけ我儘を言って回ったくらいだから、悪魔そのものが食に興味ないって訳じゃないとは思う。

ところで、ジュラの大森林周辺は現在大規模な収穫期に入っており、卓上には今朝取れたばかりの様々な種類の果物が所狭しと並んで瑞々しい芳香を放っている。
幹部の殆どは食べずとも生きていくのに支障は無いが、それでも元が食事を必要としていた生物である影響か、毎日何かしら食べたり飲んだりしていた。しかしディアブロだけは、宴会の時ですら殆ど何も口にせず俺の側で酌をしたり采配を取ったりとずっと何かしら働いていた。
物を食うと言う行為そのものが嫌いならば仕方はないが、興味が無いとか機会が無かったというだけなら勿体ないのではないかと思ったわけだ。
「ほら、これとか美味いぞ?」
マスカットによく似た果実を一つ摘んでぐいぐいと口元に押し付けると、薄い唇は素直に開き、真っ赤な咥内に緑の果実が呑み込まれる。
「…美味しい、です。もう一つ頂いても?」
「おう!当たり前じゃないか幾らでも食べろよ!」
その反応に気を良くして皿を差し出すが、ディアブロは手を出す事はせずその代わりに俺の隣に座るとぱかりと口を開いて此方を向いた。

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