+ゲルカレ

ゲルドとカレラが揃って平伏した時は一体何なんだとスライムの身体で右往左往と暴れまわったが、それが結婚の許しを得たいとの陳情であったと知り、それまでのマイナスな思考は吹っ飛んでその喜びに身を任せまたしても同じように上下左右に暴れまわった。顔合わせの一件以降時々仲良くしてるなーとは思ってたんだけど、まさか幹部同士でくっつくなんて。いやまあ職場恋愛と言えばそれまでなんだけど、それにしたってまさかこの二人が。

「あれ、でもさお前らって子供作れたっけ?」
狂喜の踊りを一通り踊り終わって少し落ち着いた所で、俺が思わず告げたのはそんな言葉だった。勿論、言った直後にこの発言は不味いと直ぐに気づきはしたものの、一度口から出したものはもう元へは戻せない。
未だ頭を下げたままだった二人の顔を上げさせて恐る恐るその顔を覗き込むと、意外にも、二人揃って嬉しそうな何だかはにかんだ笑顔で迎えてくれた。
「オレはベニマルとは違い、進化しても種族はハイオークのままですからね。種の保存に問題はありません。」
「悪魔族以外と番うとどうしても子供は相手の一族になりますが、それ以外に問題ありません。」
いや、俺は別に子供を作れないなら別れろとかそう言うつもりで言ったんじゃないんだだ純粋にそう…えっ、いやちょっと待て。
「悪魔って子供産めるのか?」

「よほど気に入った相手でなければ産もうとは思いませんから、前例は少ないと思いますが、一応は可能ですよ。」
何故かカレラの代わりに近くを通りかかったベレッタがそう告げた。ぐるんとそちらへ顔を向けて仮面に包まれた顔を見上げる。
「とは言っても、最低でも受肉している上位魔人と言うのが条件ですが。ああ、後はワレも肉体が大分金属に偏っていますから難しいでしょうか。繁殖の希望は無いのでこのままで構いませんがね。」
ベレッタの丁寧な説明を有難く聞きつつも実際には右から左だ。だって、そうだろ。悪魔に出産が可能だと言うのなら、ディアブロだって孕むかもしれないのだ。
無責任な事を言っていると言うのは重々承知だが、俺はその時まで、子供が出来たらなどどは小指の爪先ほども考えてもいなかった。だがしっかりがっつり行為はしているし何なら胤もばっちりばら撒いている。
おいおいおい、アイツがある日突然元気なスライムを抱えて来たら俺はどうすりゃ良いんだ!?

《……解。マスター側に生殖能力が無いので、その懸念は不要と思われます。》
するとそこに天の声ことシエル先生の突っ込みが響き渡った。呆れたように聞こえるのはきっと気のせいだな。いやあ、そうだったそうだった。良かったー!

降って湧いた懸念も消え、幸せそうな二人におめでとうと祝いの言葉を掛けてもう一度ぽよりと跳ねた。結婚式はうんと豪華にしなければ。


後になって悔やむから後悔。とはよく言ったもので、覚悟の無い状況で父親になる事は避けたかったが、決して父親になれないと言われるとそれはそれでどうなの?とベッドに入り、幸せそうな表情でスライムの身体にしなだれ掛かるディアブロを見て漸く思い至った。

……いざとなったら、地球から悟の遺伝子を持ってこよう。そうだそうしよう。

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