「リムル様には八星魔王を辞して頂こうと思います。」

ずらりと並んだ幹部達の中から代表して、シオンが一歩前へと踏み出しそう言った。
昨日は宴会でもなんでも無かったので二日酔いと言うのは考え辛く、睡眠も不要なので寝不足なわけでも無いだろう。
酔っているのでも寝ぼけているのでも無ければ後は思考誘導辺りだが、生憎こいつらが心底本気だと言う事は嫌という程理解しているつもりだ。

「じゃあ魔王は七人になるのか?」
そうなったら抜けた責任とか言って多分また俺に命名押し付けられるんだよな。八星魔王って割と気に入っているんだけど…そう言えばダグリュールが抜けたからもう既に七人なのか?それ以上減るとなるとちょっと寂しい気もする。

「それも考えましたが、幹部会議の結果ベニマルを後釜に据えるのが良いのでは無いかと言う結論に落ち着きました。」
強さだけで考えればディアブロやゼギオンでも良さそうだが、テンペスト軍総大将と言う地位を考慮した結果だろう。
「俺はこのままでも良いんだけだなぁ。」
だがそんな俺の呟きも虚しく、誰一人として首を縦に振ってはくれなかった。

「リムル様が他の魔王連中と同格に扱われるなどあってはなりません!!!」
「そうです奴等に幹部レベルの実力がある事は認めますが精々その程度です!!!」
「実際ディーノはゼギオン様に負けております!!!」
「クフフ、ギィとて私と同格でしかありませんからね。」
「リムル様が上に立って下さればワレもラミリス様と共に喜んでお仕え致します。」
《解。マスターの戦闘能力は明らかに他の魔王とは一線を画しており、この要求は正当なものと判断します。》
怒涛の如く言葉を並べる幹部達に、後方で控えている以下部隊長クラスや事務方のゴブリナ達もうんうんと頷いている。あとベレッタ、君はそれで良いのだろうがラミリスの意見も聞いてやったらどうだろうか。シエル先生はちょっと落ち着いて欲しい。

「魔物の王なんだから魔王で良いだろ。あいつらだって領地のある王様なんだしさ。」
強さこそ全て!なんて言ってしまうと小国は全て成り立たなくなってしまう。実際ドワルゴンとブルムンドなら天と地程の国力差があるが、どちらの国王だって王は王だ。ならば各々が領地を治めている魔王が魔王と横並びに名乗った所で何の不都合も無いじゃないか懇々と説得した。

「ではせめて領地を持たぬ穀潰しを魔王から除名しましょう。」
きりりと眦を釣り上げたアピトがそう言うまで一人忘れていたが。
しかしアピトはディーノと一体何があったのだろうか。何故か素晴らしいタイミングで現れたディーノが固まっているし、一緒にやって来たラミリスがそれを指差して笑っている。ああそうか、幹部がこんなに大集合してたら何かあったのかって気になるよな。悪い悪い、でも俺の所為じゃないからな。

……俺が辞めるのが先か、ディーノが辞めさせられるのが先かと思ってしまったのは、本人には内緒である。

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