その報せを受けたラミリス様がリムル様の所へ向かうと言い出すのは予想がついていた。そしてワレを伴として連れて行くであろう事も。
進化の系譜が届いた事で予想はしていたが、久方ぶりに目見えた創造主は記憶していた何十倍もの強さを得ており、近くには見知らぬ黒髪の悪魔を侍らせていた。
今まで出会った事も気にした事も無かったが、その悪魔こそ己の系統の真祖だと言うのは一目見ただけで理解した。そして同時に、製作者である彼の底知れぬ力の一端を窺い知り畏怖と崇敬の心を強くさせる。
ディアブロと名付けられたらしい原初の黒は、リムル様のお役に立つべくいっそ卑屈なまでに媚び諂っていた。
自分とて初めてあのお方の前に立った時にはどうにかして配下にして貰えないものかと考えたものだが、彼を見るとまだまだ覚悟が足りなかったな、と自分には珍しく反省する。
それでも仕えていたい想いに変わりはなく、まずは目前のワルプルギスに向けて意識を切り替えた。

***

自分より遥か格上であることを考慮した上で、生意気な、と思わずにはいられなかった。
「もー!だからベレッタはアタシのだから変な事しないでってば!」
「何がアタシのだ。お前とあのスライムが敵対した時、どっちに付くか分かんねーような奴に背中を任せるんじゃねえよ。」
果たして彼にはラミリス様の旧友であり、偉大なる魔王の一柱でる自覚があるのであろうか。全く以って許し難い。
流石にそれは愚問であると隣のトレイニーも感じたらしく、眉をひそめて発言元の赤毛を睨んでいる。
「何だよ。じゃあお前等はどうするつもりなんだ。」
トレイニーにまで睨まれたことにより、少しは此方の話を聞く気になったらしい。ワレは敢えて最上級系の礼をしてから答えを述べた。

「ラミリス様と共にリムル様に許しを請います。」
リムル様の許しが得られるのならば、謝罪の最上級系であるドゲザとやらも辞さない。ラミリス様とその配下だけでリムル様と敵対するなどと、それこそ両者どちらに対しても義理を欠いていると言わざるを得ないではないか。負ける。絶対に勝てない。理解していて挑むなど愚か者のする事であるし、リムル様は非常にお優しい方なのでラミリス様とワレとトレイニーが三者揃って許しを請えば恐らく命だけは助けて下さる。大体にしてリムル様とラミリス様が命のやり取りをする理由が無い。

そもそも魔王ギィとは原初の赤と呼ばれた最古の悪魔の一柱であり、原初の黒ディアブロ様と同格の悪魔である筈だ。
そのディアブロ様がリムル様に絶対の忠誠を誓っているのだから、多少魔王となったのが早かろうが遅かろうが、ギィ如きがリムル様に指図をしようなどと不遜も甚だしい。

ワレも同じ悪魔であるから分かるが、悪魔は相手の感情を察知することに長けている。ギィ程ののレベルになれば、ワレやトレイニーの思考を読むことなど朝飯前であろう。
それを承知した上で、思い切り心の中でそう罵った。心の中ならばラミリス様には聞こえまい。

ギィは何とも言えない表情でラミリス様、ワレ、トレイニーと順番に眺めると頭を振りながら大きくため息を吐いていた。
だから赤系統は駄目なのだ。




ベレッタって「リムルの部下であるラミリスに仕えてる」感あるなって割と思ってる

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