久しぶりの自宅である。
いやぁもうここに来るまでは本っ当に色々あった。目が覚めたらスライムになって早数年。村を作ったり国を作ったり部下が出来たり魔王になってみたり、それから警察の事情聴取とか病院での精密検査とか職場への根回しとか…一番最後のは殆ど田村にやらせたんだけどね。まぁ無事助かった代償だとでも思ってくれたまえ、ははは。

リムルとして過ごした居た時間の方が長かったにも関わらず、体感としては地球に戻ってからの方がごたごたと面倒だったように感じる。
まあ向こうではちょっと長ったらしい話は思念通話やシエル先生にお任せが当たり前で、口頭でゆっくり説明する事なんて滅多に無かったからなあ。
これから此方で生活を再開するにあたって、気を付けなければならない事の一つだろう。
そして俺はこれから、もう一つ大切な事を確認しなければならない。


そう、息子の起動具合である。

今の俺は魂の代わりに宝珠(ギジコン)を入れて、死んだ筈の肉体を動かしている。
これは旧帝国兵を生き返らせた時にも使った方法で、仕組みとしては本物の肉体に仮初の魂をくっつけていると言うものだ。肉体は遺伝子レベルで元通りになっているから、理論上は息子の使用もその先の子供を作るという目的も問題無く行われる。筈だ。シエル先生もそう言っていたのできっと多分間違いは無いだろう。

だが、いくら頭の中で理解していたとしても説明を聞いて納得していたとしてもそれはそれ。やはり実際にやってみないと不安なことは間違いない。
前置きが長かったが、つまりこれは実験後の検証のようなもので、決してあちらの世界で唯一発散出来なかった欲望を解放して久しぶりにスッキリしたいとか断じてそんなのではないのだ。
ティッシュボックスを引き寄せた所でパソコンを起動させ、ロックのかかった画像フォルダのパスワードを入力する。





「リムル様はこのような姿がお好みなのですか?」



背後から突然聞こえた声に思わず椅子の上で飛び跳ねた。
今回こうして世界を渡るに至って、俺は一人だけ部下を連れて来ていた。
本当はもう一人と言うか一匹、常に影に入っている奴を連れて来る予定だったのだが、丁度ゴブタとじゃれている所だったので、ランガを呼ぶのは諦めて第二秘書だけをお供に呼んでいたのだ。
え?第一秘書?アイツをこっちに連れて来てみろ東京湾の生態系が崩壊し周囲の人間のSAN値が直葬する俺はそんな地球を苛めるような事は出来ない。

「お、おおおおかえりディアブロ。早かったんだな。」
「クフフ、取り急ぎ誘惑の世界(パラダイスタイム)に閉じ込めて永劫の苦痛を与えています。シオンさんから持ち帰るように頼まれましたので。」
笑いながら物騒な返事をすると、そのまま恭しく頭を垂れた。つまり視線を下へと向けた。俺も釣られて頭を下げた。



おめでとうございます元気な男の子です!


元気な!!男の子です!!!!!


「ああ、そう言えば今の肉体は人間の男のものでしたね。」
思い出したようにぽんと手を叩いたディアブロは何でもない事のように一人納得していた。そしてその隣で俺は穴があったら入れ…入りたいとはこのことかと同じように納得していた。
いや本当勘弁してくれよだからまじまじ見るなって。
取り敢えず気持ちを落ち着かせる為に深呼吸だ。それで何だっけ素数か、素数を数えれば良いのか。よしいくぞいーち、にー…

「宜しければこの身をお使い下さい。」


は?

何を言ってるんだとばかりに下げていた頭を上げると、そこにはふるんと揺れる真っ白な果実が二つ。そしてその上にはにっこりと微笑んだディアブロの首。そう言えばギィも女になってたな悪魔って何でもありなのかとか軽く現実逃避をしている内に、気付けば俺の隣ではめちゃくちゃ可愛い悪魔っ娘が黒いレースの下着姿で正座していた。

「お気に召しませんでしたか?ではもう少し幼い姿に…「待て待て待て!!幼いって何だよそれじゃあまるで俺がロリコンみたいじゃねーか!!」
「ロリ…?申し訳ありません、画像の姿が今の私より幼く見えたので…。」
不思議そうに首を傾げたディアブロは、男の姿でもあれだけ美形だったのだから当然と言えば当然なのだが女になると一層蠱惑的で、にじり寄られて思わずごくりと喉が鳴った。
(そう言えばコイツのスキル[[rb:誘惑之王>アザゼル]]じゃねーか!ふざけんな卑怯だ!!)
よりによって誘惑である。この三十七歳現役魔法使いをどうしようと言うのか。ああでもそれよりも。
「リムル様。お願いです、どうかお情けを。」

スキルだとか部下だとかそんなものはただの建前でしかなく、それよりも目の前で一心に俺を求めて来る姿がただただ可愛くて、ごくりと喉を鳴らすと柔らかそうな唇に噛み付いた。

「ん…ふ、ぅ。」
ちゅるちゅると音を立てて唾液を啜り、舌を絡めて、たわわに実った柔肉を下着の上から揉みしだく。
白い腕はそれに応えるように首へと回り、細い指先は髪の毛を混ぜるように撫でてくる。声は嬉しそうにくふくふと笑っている。
「ん?おいディアブロ、お前何も感じないのか?」
嬲っていた唇を離すと、むっちりと張った太腿をさすりながら様子を伺う。ディアブロは息を荒げるでも濡れた唇を気にするでもなく、けろりとした顔で為すがままにされている。これだけ触れられて何も感じないのはおかしいと本体の方からディアブロの情報を探ると、痛覚無効や各種耐性が発動しっぱなしであった。
つまり決して俺のテクニックが無いなどと言う理由ではない。

「触覚はありますよ?」
「そうじゃなくて、こういうのは俺だけ気持ちよくなっても駄目だろ。お前も痛覚耐性とか邪魔だから切っとけ。」
防御などせず全てで俺を感じろと命令すると、素直にスキルの類を停止させ身を寄せてくる。
もう一度仕切り直しのキスをして、今度はブラジャーを取り去ると、胸の先端を引っ掻いた。

「ひんっ!」
おお、鳴いたぞ。
あからさまに変化した反応に気分が良くなり、今度はパンツの中に手を突っ込んだ。
「気持ち良いか?」
「え…も、申し訳ありません。よく分から…あっ!」
これだよこれ。俺はこれを求めてたんだ。
コイツは他の奴等の前では常に飄々とした態度を崩さない癖に、俺のちょっとした一挙一動で大袈裟なくらいに反応する。そう言えば初めて会った時も誰だって聞いたら泣きそうな顔してたなぁ。

「リムル様、リムル様」
首筋に張り付いた髪の毛を払いのけてやると、小さな声がまるで啜り泣くような必死さで俺の名前を呼んでいる事に気付いた。

「悟って呼べよ。この身体の名前だ。」
涙で濡れた頬にキスをすると、今度はディアブロの方から唇を寄せてきた。
「悟、さん」



「様」じゃなくて「さん」で呼んだのは、後で褒めてやろう。


***



とろりとした目のディアブロが、俺の腕を枕に寝転がり、撫でて欲しそうに頭をすり寄せて来た。こんな姿は普通に可愛いと思う。
まあ、あれだ。コイツはもう俺が居ないと何にも出来ない身体になってしまっているだろうから、その辺りは責任を取らなきゃなとも考えてるんですよ。その上で、初めての彼女が悪魔なのも、そもそも女ではなさそうなのも良いんじゃないかと、そう思った。


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