オルゴォル


胸元で蠢く何とも言えないむずむずする感覚に、意識を引っ張り起こされる。
寝ぼけ眼で瞬きを繰り返していると、背後から抱き締められて胸を揉まれている事に気が付いた。犯人が誰なのかなんて、逞しいこの腕を見なくても解る。
「んっ、イーノック…何…あっ。」
身を捩って逃れようとしたが、反対に身をまさぐる手に弱い場所を撫でられてしまい高い声を出す羽目になった。
今日のイーノックは何だかおかしい。眠っている私に悪戯をするのはよくある事なのだが、普段なら私が起きたと解るや否やそのまま行為にもつれ込むのに、今日は私をいじり倒すだけでそんな様子が見たあらない。
一体どうしたのだろう。拘束されたまま首だけでなんとか振り返ると、そこにはすやすやと気持ち良さそうに寝息を立てているイーノックの姿があった。

「え、や、待っ、て…。」
「んー…。」
「お前、寝惚け、や、あっ、あ、駄目…も、あ!」

イーノックが私の声に起こされた頃には、私の格好はとんでもない事になっていた。
両の胸は赤く腫れ、下肢は勃ち上がりぐちゃぐちゃに濡れている。もう準備は出来てるからいつでも挿れてくれもう、バカ、好き、早く抱いて!

「る、ルシフェル…これは…。」
「お前の所為だバカ!」
涙目で抱き付いてからも散々強張ってやったので、早起きしたにも関わらず結局その日は二人で昼過ぎまで寝室に籠る羽目になったのだった。