ペテン師、新月の夜に…


「ずっと側に居てくれると、言ったじゃないか…。」
メタトロンはそう言うと細い腰にすがり付きながら涙を流し、何度もルシフェルに口付けを落とす。
やがて性的な意図を持って下半身を這い回る腕にも、ルシフェルは何の抵抗も見せなかった。
「ルシフェル。」
自分の名を呼ぶ男から顔を背けたルシフェルの白い身体には、朱と白濁がこびりつき、それまで行われていた凌辱の激しさを物語っている。

堕天したルシフェルを捕らえたのは、神でもミカエルでもなくメタトロンとなったイーノックだった。
メタトロンは神に、ルシフェルが謝罪するまで自分が監視し罰を与えるからと願い出て、更にルシフェルが正式に謝罪した暁には再び大天使として復帰させるという約束まで取り付けた。
どう考えても破格の待遇で、それだけ、神がルシフェルとメタトロンを贔屓にしていると言う事を物語っている。

しかし、ルシフェルは絶対に謝罪をしなかった。
「私は、悪くない。」
罰と言う名の下に行われるのは何時だって愛の営みで、メタトロンはもとよりルシフェルだってその行為に悦びと楽しみを覚えている。それなのに。
「酷い人だ。またそうやって、私を煽る。」

罪を認めてしまえば、この甘くて恐ろしい牢獄から出なければならない。
優しい褐色の腕で作られた檻から出るくらいならば、赦しなど、恩情など不要である。

ルシフェルは自分の身体がまた暴かれようとしているのに気付いて、ゆっくりと目蓋を閉じた。