当選


三日前に辿った道を、がたんごとんと電車に揺られて戻っていく。
まるで異世界の出来事のようだった。イーノックがふわふわと浮わつく脳味噌でそんな事を考えていると、左肩に重みと熱が加えられて視線をずらす。
するとそこでは、同じように未だ夢心地といった表情のルシフェルがふへへと笑いながらこてんと頭を乗せていた。

「楽しかったな。」

温泉に入って、美味しい食事をして、セックスをした。それ意外は何もしていない。
ひたすら部屋の中で過ごした自堕落で甘ったるい時間と空間は二人の脳を麻痺させていた。
何事にも囚われず、ただただお互いだけを見つめていた二泊三日は、何でも知っていると思っていた相手の事を、今までよりももう少しだけ知れたような気がして心をほっこりと暖める。
「ああ、またいつか来よう。」

電車の中で繋いだ手は、結局家に帰りつくまで離されることは無かった。