孤島の鬼


もしも世界が終わるなら、その時こそ私は貴方に愛を囁こう。

「酷い男だな、お前。」
イーノックの言葉に苦笑しながら緩く首を振る。世界が終わるその時まで、お前を手に入れる事が出来ないなんて。
洪水を望んでしまいそうになるよ、私はお前以外の人間になど、殆ど興味は無いのだから。
「そもそも、それはもう告白のようなものじゃないか?」
空間を移動して奴の真後ろに立ってやる。わざわざに作り出した吐息が首に掛かって、金色の先が揺れた。

「最後が、良いんだ。」
何もかもを包み込むような笑顔が振り返ると、うっとりとした心地の声と腕が私を撫でる。
「貴方が初めて見た者が私で無いのなら、せめて貴方が最後に見たのが私であれば良い。」

その言葉は魅力的かもしれないが、そんな我が儘な奴に私はあげないよ。
私が愛してやるのは、私を愛してくれる者だけだ。
どっちが先に折れるのか、この恋の決着は簡単につきそうもない。