【KR】cube


大したことは無いだろうと言う判断がいかに甘かったか。イーノックは早速頭を抱えた。
子供とは何故こうもじっとしていられないのか、また何故こんなに眠たくなるのか。
ペンを走らせる腕はどうやっても言うことを聞かず、眠りの淵へと全力疾走身体を叱咤して何とか一行書き終えた。
しかしこのままでは後二、三行書いた頃には確実に夢の世界の住人になっているだろう。それならば少し身体でも動かそうと鍛練場に向かった。
するとこちらに来たら来たで今度は身体を動かすのが楽しくなり過ぎ、予定を大幅に上回る時間を外で過ごした挙げ句、部屋に帰った瞬間ベッドと仲良くなってしまう。

それが天界時間で一週間続いた。

どれもこれも皆ルシフェルの所為だ、イーノックがそう考えてしまうのも無理は無い。
実際、イーノックは子供の頃じっとしていられないなどと言う事は無かった。最初こそ子供だからかと思っていたが、よくよく考えるとこの眠気も肉体の高揚も、それだけでは説明がつかない。

とにかくルシフェルを捕まえてこの身体を元に戻して貰おう。

そう考えた所ではたと気付く。
今のこの身体はルシフェルの悪戯によって変化したものだ。彼の性格からして、一日に何十回となく自分の元を訪れ、その度にからかったとしてもおかしくは無い。
自分の変化に手一杯で気が付かなかったのだが。

変化してから、ルシフェルと会っていない。

何故?どうして?と頭上に盛大なクエスチョンマークを浮かべながら、とにかくとばかりにルシフェルの部屋へと向かった。