自惚れる


上半身裸でぐったりと眠っているルシフェルを見た時に思ったのは、ああついにやったのか。と言う事だった。
合意だと嬉しいがもしかしたら無理矢理だったのかもしれない。大天使と言えども、いやだからこそ性行為など縁が無かっただろう。私に教われたとなるとろくな抵抗も出来ずに凌辱されてしまったのでは無いだろうか。

すやすやと安らかな寝息を立てるその顔は、穏やかなようにも見えるが普段の彼と比べるとやはりどこか疲れているようにも見える。
昨日の事を覚えていないのが口惜しい。彼はどんな顔で、どんな声で、何を言ったのだろう。もう一度それを教えてくれないだろうか。

そんな事を考えていると、長い睫毛が揺れて赤い宝石が私の姿を捕らえた。
「イーノック…。」
「ルシフェル、…私は…。」
ルシフェルはがばりと勢いよく起き上がったかと思うと、ふるふると首を横に降って瞳に涙を浮かべる。
「お、覚えていないのか……いや、それなら良い。忘れてくれ。」
震える身体、潤む瞳、儚く消えてしまいそうな態度のルシフェルを見て、全て解ってしまった。

「…お前が酔ってるのを良い事に、私は…私は…っ!」
そう呟くのを遮ると抱き込んで額に口付け、背中からまろやかな臀部、すらりと伸びた脚へと手を動かして身体を撫でる。脚の間がぬるついているのが分かると一気に熱が上がって、勢いのまま再びベッドに押し倒した。
「大丈夫だ、問題ない。」


そんなに心配そうな顔をしないで、全てルシフェルの罠だって事も気付いているから。