別れる


さぁ、ここら辺りで暫くのお別れだ。何、大丈夫さ姿は見えずとも私はずっとお前を見守っている。

イーノックは少しばかり寂しそうな顔で私を見詰めたが、額に一つ祝福をしてやるとそれ以上は何も行動に移す事無く黙ってその場から一歩引いた。
嗚呼そんな顔をするんじゃない。離れがたくなるだろうが。
「またすぐ会いに来るよ。」
だからそれまで、少しだけ、ほんの少しだけ我慢しておいてくれ。

***

イーノックを置いて天界へと戻る度に、何とも言えない胸の痛みに襲われる。
ああイーノック、次はいつ会えるんだろう。取り敢えず目の前の仕事を片付けないと会えないし…あいつに危機が迫れば向かう事も出来るが、危ない目にはなるべくあって欲しくないに決まっている。
どうせなら離れる前にもう二、三ラウンドくらいヤっておけば良かった。

「兄さんいい加減仕事して下さい。」
繊細な心をもて余している私にこんな物言いが出来るのはミカエルだけだ。全く、我が弟ながら酷い奴だ、今にも胸が張り裂けそうな私のこの心を理解してくれないなんて。
「一年に一回くらいしか会えないんだぞ。」
「目を開けて寝てるんですか?一週間に一度は会ってるじゃないですか。」
「気持ちの問題だ。イーノックだって会う度に喜ぶし離れる度に悲しんでいる。」
ミカエルは呆れたようなため息を吐いた後、溜まった書類を私の机の上に積み上げてきたので、私は仕方無くその山に手を伸ばした。