指切り


「いや、お前、それはちょっと…。」
「…私もどうかとは思っている。すまない。」

謝れば良いって問題じゃあないんだが…まぁ良……くはないな。うん。
「悪いが私はちょっと萎えたぞ。」
「いや、それはその気にさせてみせるから大丈夫だ問題ない。」
そう言ってイーノックの手は私の腹の辺りを這い回り始めた。
その手つきは相変わらず気持ちが良くて、盛り下がっていた気分が再び上昇するのが自分でも解る。

「ん…。」
「ルシフェル。」
荒くなった息が首筋に当たって、何だか喰われる前の獲物にでもなったようだなと思ったところで陥落した。
噛んで欲しい。噛んで、イーノックのキスマークと歯形で肌を埋め尽くして、私がお前のものだと皆に見せ付けて欲しい。
「あっ、あ、イーノック。」
「ん、ルシフェル。可愛い。」
しかし、数回首に唇が当たったなと感じたところで、何故かイーノックの顔が遠ざかっていった。

「?」
「ルシフェル、すまない。」
その謝罪に、嫌な予感がして思わず眉を寄せる。
「もう一度、踏んでくれないか。」
先ほどうっかり躓いて踏んづけたのがよほど気に入ったらしい。
M同士だなんて聞いてないぞと思いながら盛大にため息を吐くと、イーノックの表情が悲しそうなものへと変化する。

「代わりに後で噛み付けよ。」
お前の頼みが聞けない訳無いだろ馬鹿。
勝手に交換条件を提示して、ゆっくりと足を伸ばしてやった。