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イーノックがすやすやと寝息を立てながら、それはもう気持ち良さそうに眠っていたので。
ルシフェルはにやりと笑ってその場に降り立った。
何と言う絶好のチャンス、何と言う悪戯日和。

とりあえず額に肉って書いて頬に私のメールアドレスを書いといてやろう。後はどうしてくれようか、目蓋に目?口髭なんかも楽しそうだな。目覚めたイーノックに何か言われたらこう言ってやるんだ。「それは君にとって未来の話さ」ってね。ふっへへ。

ニヤニヤと悪い笑みを浮かべイーノックの元へと歩み寄るルシフェルの左手には、何処から持ってきたのか黒い油性マジックが握られている。
きゅぽんと可愛らしい音を立ててキャップを引っこ抜くと、イーノックの上に覆い被さるようにして顔を寄せた。
(意外と睫毛長いな…あ、ちょっと口開いた……っ、え?)

「んっ!」
右手を掴まれ、左手はマジックで塞がっている。
抵抗出来ない唇に何かが当たった。顔が先程よりも更に近い。
「っ、イーノック!」
「待ちきれなくなって。」
ドヤ顔で再び顔を寄せるイーノックに、そんなに待ちきれなかったのならくれてやると、シンナーの香りがする左手を近付けた。

「…ルシフェル。」
「油性だからな。暫くは消えないぞ。」

額にでかでかと書かれた『ルシフェル専用』の文字を見て、イーノックの頬が緩むのはもう暫く後の事。