吐息


ふむ、と一つ頷いて、ルシフェルは目前で盛り上がっている毛布をまじまじと見詰めた。
人間とは案外器用なものなのだななんて、視線の先に居る相手が知ったら憤死しそうな事を呟くと、ついにその身を包んでいる布に手をかけてえいやと取り払う。
そうして好き勝手をされているイーノックはと言えば、毛布をひっぺがされた瞬間にぶるりと一度身体を震わせはしたものの、未だに起きる気配は見せていない。
それを幸いとばかりにルシフェルは先ほどよりも更に遠慮無しに見詰めていた。

「寝ながらでも勃起するのだな。」

イーノックを、正しくは、イーノックの下半身を。

毛布を剥がされ、残りは薄い書記官服だけとなっているイーノックの下半身は、隣に居るルシフェルの存在を知ってか知らずか元気に反応しており、気のせいでなければまた少し大きくなった。
「よし。」
興味津々、という感情を隠さずに、今度は遂に残った服にも手を伸ばす。
そうして現れたイーノックの性器は、身体に見合ってと言うだけでは説明がつかない程に大きく逞しく、ルシフェルは自分が仕掛けたにも関わらず、思わず固まってしまった。

(予想はしていたが…まさかここまでとは。)
ルシフェルが呑気にそんな感想を抱いた直後。
「え、ひゃっ!」
服を脱がせた刺激でかそれとも元々のタイミングだったのか、ともかくルシフェルが指を鳴らす暇すら与えられず、イーノックのものから溢れた白濁がルシフェルの顔や胸へと飛び散った。

「っう…。」
生臭い液体にまみれ、思わず顔をしかめる。
するとその声に反応したかのように、先程まで大人しく閉じていたイーノックの目蓋が、ぴくりぴくりと動き始めた。


寝ぼけ眼を擦りながら起き上がってみれば、目の前には、何故か剥き出しになった自分の下半身と、白い液体で顔を汚したルシフェル。


「…ルシフェル。」
「え、あ、その…。」
流石のルシフェルもきまりが悪くなり、言葉を濁して目を泳がせていると、ぬっと延びてきたイーノックの腕に捕らえられてベッドへと引き倒された。
「ろっとぉ!?」

「寝込みを襲うだなんて、フェアじゃないと思わないか。」
寝起きだからなのか、妙に目が据わっていて、押し倒された形のルシフェルはただ目を丸くして唾を飲み込むしか出来ない。
「今度は私が起きている間に咥えて欲しい。」
耳の穴に唾液を送りながらそんな事を呟き、胸を撫で擦る。
そこで漸くイーノックが勘違いをしているのに気づいたルシフェルは、慌てて覆い被さる身体を押したが、分厚い胸板は幾ら腕を突っ張ってもびくともせず、それどころか反対に自分の身体を弄られてどんどんと力が抜けていく。

結局、はぁと一つ溜め息のような吐息を落とすと、ルシフェルは観念してイーノックの首へと腕を回した。