うたた寝


天使には食事も休息も必要無いと聞いたのだが、果たしてこれはいかに。
目の前で心地よさそうにすぅすぅと寝息を立てているルシフェルを見て、イーノックは思わず首を傾げた。

もしかして寝たふりをして自分をからかっているのだろうかと、すぐ傍まで歩いていってその様子をまじまじと見たが、気持ちよさげに上下する腹や胸はどうにも演技には見えない。
「…ルシフェル?」
小さな声で呼んでみると、口の端がふにゃりと緩んだのか解った。

どうしたものか、これは可愛い。

本当はちょっと、ちょっとだけ、普段の憂さ晴らしがてらに髪を下ろしてみたりシャツのボタンを全部閉めてみたりしてみようかと思ったのだが、その無邪気な寝顔に毒気が抜かれ、思わず笑みが浮かぶ。


ルシフェルが目覚めた時、隣ではイーノックが先程までの自分のように安らかな寝息を立てており、何故だかそれが恥ずかしくなって今度こそ眠った振りをした。