視線


「誘っているのか?」
腕を捕らえられたと思ったら、意外に近い場所に双眸があって驚いた。
「私が貴方の事をどんな目で見ているか、気付いていない訳じゃないだろう?」

そう言って唇をなぞられると、私は何も言えなくなってただ立ち尽くすしかなかった。
「貴方に嫌われたくは無いから無理にとは言わないが、あまりからかわないでくれ。我慢が出来なくなってしまう。」
なでなでと何度も指が唇を往復するのにまかせてじっとイーノックの目を見る。
「ルシフェル。」

とん、と背中を押すように名を呼ばれた。

「…解らないんだ。」
「?」
「だから、教えてくれ。お前がどんな風に私を見ているのか。」
指先を食んでねだると、大丈夫だ問題無いと笑われたのでその腕に大人しく身を任せる。

願わくば、お前のそれと私のものが、同じでありますようにと祈りを込めて。