空っぽでした


下がる頭によそよそしい態度。
それが苦痛なわけではないし、大天使という自分の立場上仕方の無いことなのかもしれないが、気の置けない友人なのであろう二人を見て、全く羨ましく無いと言ったら嘘になる。

たった一人だけ居る親友には、今は会えない。

あれで真面目な彼の事だから、恐らく必死になって次々と流れてくる書類と格闘しているんだろう。何度か見掛けた真剣な横顔を思い出し、少しだけささくれた心が落ち着いた。

春の風が頬を撫でる。

暖かいはずのそれなのに、冷たさを感じて身を震わせた。
本当に暖かいあの掌の温度を知ってから、吹く風も仮初めなのだと初めて気が付く。凍てついたこの心を暖めてくれるのは、愛だけだ。

お前を知らなかった時の私は、何もかもを知っているつもりで何も知らなかった。心の空虚を空しいとも思わずに生きていた自分は、なんと愚かだったのだろう。

「早く、会いたいよ。」

届く相手の居ない呟きは宙へと溶けて、焦がれる想いと共に空へと昇った。